実戦からヒントを得た作品
 詰将棋を実戦から取材して作る人は少ないと思います。
 私も同様ですが、ごく少数のみ経験があります。
 とは言え、元の局面をどの程度作品に残しているのかは疑問です。
 その少ない例を実戦譜と取材局面と完成図で示してみたいと思います。
 実戦譜中のボタンを押すと取材局面になります。先後は合わせていません。
 
 第1番  実戦譜   完成詰将棋
 
     変化が完成詰将棋でも完全に割切れていませんが実戦では
     全くどうにもならない状態です。取材はしても作品にする
     には時間がかかります。
 
 第2番  実戦譜   完成詰将棋
 
     収束が長くだらけるので、逆算を試みた作品です。
     結果は変化・紛れが非常に難しい作品になりました。
     私の作風とは全く異なる作品です。
     慣れないことはやらない方がよいのか、たまには作風
     以外にも勉強した方が良いのか。
     いづれにしても、実戦譜から作品を作るのは良い方法
     とは思えません。
 
 第3番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     実戦では完全な詰みと思っていたが、詰将棋にはなりにくい。
     特に玉が9二にいるのが不満である。初手9二金に同香は
     9一銀・同玉・8三桂以下詰みになる。持駒に桂が加わると
     使うのに苦労する。特に手順前後を防ぐのが難しかった。
     当時、はやった升田式石田流の末期で、持久戦は先手の優位が
     残っていない。
 
 第4番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     先手が終盤に入ってからは、ずっと優勢な将棋です。現在では
     この序盤は疑問ですが、筋違い角を打たせたので後手が対局感を
     間違えました。終盤は勝ちはないが、粘りに粘っていたら先手
     が連続して詰みをのがし同時に自玉の詰みも見落とし逆転しました。
 
 第5番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     力戦派の先手に8筋を狙わせる作戦が成功しました。また7二飛に
     6三銀が好手で完全に後手勝ちです。ところが、丁度秒読みに入り
     4七桂成から4六銀成が大悪手で逆転しました。平凡に4八銀成から。
     詰めろをかけて勝ちです。でも秒読みなので、先手が詰まない詰めろ
     (読めていない)をかけて逆転です。詰まない局面を詰む様にしてみました。
 
 第6番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     今は懐かしい対振飛車の急戦です。振飛車全盛でもあり、かなり研究して
     います。ほとんど定跡手順でそれなりに自信はありました。先手7三歩
     が珍しい手です。9一飛成・6九飛・5九香が定跡手順です。玉が2二
     にいるので、と金は間に合わないと思いました。8九飛成では5八馬と
     踏み込む所です。9八角を見落としてからは、と金が間にあってしまった
     感じです。最後は玉が狭いので受ける場所がないでしょう。
 
 第7番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     対振飛車の急戦です。序盤で居飛車が有利になり、反撃を丁寧に
     受けて持駒を集めます。同時に自陣がはっきりした形で詰めろを
     かけます。最後は即詰ですが、自陣に余裕があるので緊張感はあります。
     実戦ではあざやかな詰みでも、詰将棋ではたいした事にはなりません。
 
 第8番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     対振飛車の位取り絡みの半急戦です。一気に終盤に入ります。
     完全に読み切るには難解な局面になりますが、なぜか詰みありの直感
     で進めてそのまま投了になりました。
     詰めに行く局面がほとんどそのまま、詰将棋的局面になっています。
     でも収束はまとまらず結構読ませる、中編ですが、実戦と詰将棋
     との差が出ます。
 
 第9番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     対三間飛車に対する、中原流超急戦というほとんど見られない将棋です。
     大差の勝負で、内容も詰めの切迫感もありませんが、珍しさは参考になると
     思います。
     詰め自体も易しいと言えます。
 
 第10番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     時代を感じさせる矢倉戦です。雀刺しに対して後手が1一飛と受けたのが大悪手
     で簡単にまけていた筈です。再度6一飛と逃げてからは泥試合ですが有利な先手が
     要の守備駒を攻めていなくて、後手が要の守備駒を狙ったために逆転しました。
     そのままでは全くどうしようもないので、小駒図にかえました。
 
 第11番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     実戦は面白い攻防ですが、後手の2枚馬が強く攻め合い勝ちです。
     結構読みの入った終盤のつもりですが、結局は簡単な詰めです。
     空いた2七を使うだけではどうしようもないので、桂捨てで空けるように
     しましたが、やはり寂しい手順です。
 
 第12番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     平凡な四間飛車から、大がかりな振り替わりに進展しました。
     後手が自陣に金銀を埋めたのが拙く、かえって目標となりました。
     後手は攻めの機会を得ることなく寄せられました。
 
 第13番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     最近は見られなくなった、タテ歩取りです。先手の乱れに乗じて
     後手の攻めが決まった様に見えますが、後手の玉も薄く攻め合いに
     なりました。後手が2枚の桂を捨てる部分が面白いですが、詰将棋の
     発想が浮かばず、先手の2枚桂捨てで作図しました。
 
 第14番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     相振飛車を先手が避けて、位取り対穴熊になりました。後手は囲いを
     後にして積極に攻めました。有利な展開になりましたが囲っていないので
     あやしげな終盤です。当時は7五歩から7六歩が詰めよだと直感で分かり
     ました。詰局面では詰みがありますが時間に追われ安全策をとりました。
 
 第15番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     当時は主流のひとつの山田流の端角からの早仕掛けです。先手有利ですが
     現在はもっと改良されています。後手は終始つらいですが玉頭戦に持ちこみ
     ました。ただ、見落としで簡単に終わってしまいました。最後は詰みは
     有りませんが助かりません。詰むように変えてみました。
 
 第16番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     昔ながらの居飛車と振飛車であまり面白くないかもしれません。
     終盤は後手がややもたついた感じがあります。結果的に、6一龍切りが
     見えていても寄せ合い勝ちを目指す指し方で必至をかけました。なまじっか
     読めると、ぎりぎりの勝ちを大差でもやってしまうので怖い面があります。
 
 第17番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     詰将棋をやっていると、読みが深くなりますが、反面読み通りに進んだ時の
     形勢判断を間違う事がしばしばあります。本局がその典型です。9二角なんか
     が見えてしまうので、6三成桂の直前で読みを打ち切り将棋は終わっています。
     ただ対戦相手が頓死を警戒しすぎる利点もあり泥試合です。次の一手やどちら
     が勝ちかには向く素材ですが、詰将棋には出来にくい素材でした。
 
 第18番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     序盤の悪手6四歩を完全にとがめた、会心譜です。
     詰める段階になると、実戦でも俗手は見つけ難いようです。持駒に桂が
     なくても詰みなのに、わざわざややこしい詰め方をしています。
     詰将棋では、桂なしの詰手順を採用しています。
 
 第19番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     最近では見ない、4六金戦法の急戦です。
     実戦では、少し長い詰手順ですが、余詰と変化の関係で、詰将棋は短く
     する必要がありました。最初の3手を残して
     全面的に作り直すのが、順算法ですがこれはこれで1局でしょう。
 
 第20番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     昔、得意だった居飛車位取りです。なかでも、あっさり位を取り替えさせて
     形を乱れさせ打開をはかる事を狙っていました。本局はあまりにも、うまく
     行き過ぎました。最後は詰ませる必要もないですが、投了以降を改造して
     、詰将棋の形にしました。やはり一本道です。
 
 第21番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     完全な定跡形の仕掛けです。ただし、飛を取り合ったあとの2六馬が本に
     載っていない好手で気がついていませんでした。そこから急に乱れます。
     つきあうように、後手も変調です。後手が6九銀を度々逃して、泥試合に
     なり最後は頓死に近い決着でした。詰将棋になる形ではありませんが、
     小駒図式でこじんまりまとめました。
 
 第22番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     当時はやっていて、得意だった7筋位取り戦法です。終始、後手の積極性が
     目立ちます。ただ終盤になってから、もたついて攻めあぐみます。最後は
     龍切りを見逃し、上部の開拓を行ってからとりますが、詰みがありました。
     当時は見事な詰めと思っていましたが、いざ詰将棋にすると色々な詰め方
     が有ることが分かりました。
 
 第23番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     実戦取材第5番と同じ実戦譜です。詰まない局面を詰むように改良すると、
     複数の作品候補が出来る事があります。
     本詰将棋はある程度、手応えを持っていましたが、4七桂を使う形が一つ
     しかなく、容易に逆算法で作意を見つけられるようです。
 
 第24番  実戦譜    完成詰将棋        
 
     実に難解な終盤でしたので、実際以上に難しく感じていたかもしれません。
     パラ誌の解説で、狙いが分かり難いとありますが、この種類の作品は
     全てその宿命が有ります。
     玉付近の配置を変えないという拘りが、上部の異様な配置になっています。
 
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