古書にまつわる話

「高城高」作品の復刊と執筆再開

昭和30年台に短編集「微かなる弔鐘」と、長編「墓標なき墓場」の2冊のみ出版して途絶えていた「高城高」は しばしばアンソロジーに登場する作家でした。

筆者は30年以上も前から読み始めて、雑誌を含めてほぼ読んでいると思っていました。

同時に新しく本がでたり、作品が書かれたりも考えていませんでした。それが、2006年末に仙台の地方出版社の 「荒蝦夷」から「高城高ハードボイルド傑作選」が出版されて注目されました。

2008年から創元推理文庫から長編1冊を含む4冊の文庫全集がでつつあります。そして作者が執筆を再開しました。

たぶん長編は入手困難本の1冊だろうと思いますが、一気に読める事になりました。(2008/08/14)

「佐々木丸美」作品の復刊

北海道に突然埋もれた作家「佐々木丸美」には不思議と熱狂的なファンがいます。

そのせいか? 古書価も異常に高騰した時期がありました。現在でも名残があります

この度、「ブッキング」から全巻復刊と、創元推理文庫の3冊の復刊と環境はなおりました。

創元推理文庫の3冊は「館シリーズ」と呼ばれるもので、個人的には一番レベルが高いと思います。

その他の作品は半数程度しか読んでいません。今の状態でも、少女向けというか乙女チックな内容に感じてしまいます。

それがこの作者の世界でしょうから、単に好ききらいの問題でしょう。

謎の多い作者ですが、文庫化されているのは少なく初期の3部作が当時の文庫で入手しやすいですが、ハードカバーとの 食い違いは読者を悩まします。また自分の世界に閉じこもりがちな主人公の性格は特に男性には理解が難しいでしょう。

広義のミステリ・幻想・伝奇などといろいろ言われますが、推理小説の謎という面からは弱いといえます。ただ、本人が 目標とする作家として、加田伶太郎(福永武彦)・仁木悦子・エラリークィーン等をあげているのは、ミスギャップを感じます。

主人公の妄想的な部分が多すぎと感じます。しかし、処女作「雪の断章」が斉藤由貴のデビュー作として「情熱・雪の断章」で 映画化されました。

そこでは、斉藤由貴が演じられる年齢という事で原作の前半をばっさり切って、後半と殺人事件を中心に短いストーリーに 変えました。結果的には余分な部分がなくなり、まとまりがよくなり主題も分かりやすくなったと思います。

映画の後半で、榎木孝明・斉藤由貴・世良正則がキャッチボールをする場面が印象的です。3人とも左利きなのですね。 (2008/08/30)

単行本のない作家

古書というと単行本のイメージがあります。ただ時代と、短編中心とかの関係で名前だけ知られていても雑誌への発表のみで 単行本のない作者がかなりいます。

復刊・古い時代の作家の本の出版は地道に行われています。その中で、はじめて単行本にまとめられる作家は、やや意味合い が異なります。

平成以降では、ミステリ関係では、葛山二郎・山沢晴雄・西尾正・中村美与子・芦川澄子等がいます。

個人的には、多くの個人作品集が出てほしい作家がいます。実現可能性は多くはないですが、単なる復刊よりは意味は大きいと 思います。

ただ、この様な出版活動は需要が少ないので、本の単価が高くなる傾向にあります。

購入するかどうかは、非常に悩ましい場合が多いです。(2008/10/25)

地方出版

古書に関わらず、流通量は大手出版社が多く、地方の小さな出版社は少数です。同時に広告もないのでいわゆる口こみでしか 広がりません。

幻の本が生まれる条件が揃っています。まあその中で後生に多くの人が捜す本がどれだけ存在するかは別の問題です。

ただ、いわゆる初出が入手困難になることはしばしばあります。

頼みの国会図書館や大図書館のカバー外にもなります。

個人的には、初出マニアでも研究家でもありませんが、たまたま読みたい作家やその研究や関連本が地方出版である事は 時々あります。

その時は探求本が購入できる価格で見つかる事は非常に困難になります。(2008/12/20)

絶版叢書・文庫

絶版単行本は珍しくありませんが、叢書や文庫でも同様です。

ある程度の数があるので、目立つとも言えます。絶版本は、機会があれば再版や復刊されます。しかし、これが叢書になると 再版は全部はなかなか行われません。

叢書や文庫は、そのシリーズの中止や、出版社の倒産が絡むと再版機会が失われます。

そのような本群はマニアの蒐集対象とも言えますが、最近は一部が復刊される事があります。その時の蒐集家の心境は微妙でしょう。

例えば「社会思想社文庫」は出版社の倒産で新刊では無くなりました。古書で捜す事となります。ただ一部は、異なる所から復刊され はじめています。

一番悩むのは、どの本が復刊されるのかの情報がない事です。(2009/02/14)