「弧王の舞」おわりに
 
無防備玉について
(1)制約 玉方の応手が玉に偏ります。合い駒が唯一の破調ですが、これに拘ると
かえって無防備の感触がなくなります。
 結果として手順が単調になりやすくなります。
(2)手筋物の短編作で可能な手順が限られます。はっきり言って2つしかないと
思います。1つは玉と攻め方の駒の距離の問題で、もう1つは攻め方の邪魔駒の問題です。
色々あっても、おおまかにはこの2つしかないでしょう。
 手筋は多くあれど、玉方の駒が関係しない手筋はほとんどありません。手筋作の限界が
はじめから見えている感があります。
 通常の詰将棋では、玉方の守備駒の無能化をはかることで成立しますが、無防備玉では、
手順の成立は全く異なる仕組みで成り立ちます。
(3)詰将棋では、余詰・変化長手数・変化同手数・きずなどの解消を守備駒の配置で
行う事が普通です。しかし、無防備玉では当然ながら攻め方の駒の配置で行います。
これは、主に邪魔駒を配置する事で対策する事になります。すべての駒は利きを
持ちますから、攻め方の駒の追加は、新たな余詰等の発生を伴う事が多くなります。
通常の駒は前への利きが強いですので、攻め方の駒よりも玉が入玉側に配置されている
時には、駒の追加による余詰はかなり生じ難くはなります。既発表作にもこの傾向はあり、
例えば無防備煙も多くなりましたが、9枚のと金を消すために、入玉から下段におう
傾向がすべての作品にみられます。例外的に、橋本孝治作の様に中段から入り入玉に
入ってから通常の追い出しにはいる作品もありますが、多くのと金の処理を盤面の
片側で行う離れわざを実現しています、珍しい例と思います。
(4)手数の問題 超短編では玉の応手のみでも不自然でないので単調差が目立ち難い
と思います。長編は、手筋とは別の世界で比較は出来ません。幸い、香龍会では
無防備煙の作者や桂香歩全駒使用「砂丘」の作者の作図課程も聞けましたが、盤の広さと
駒の密度が問題になるようで別の難しさがあるようです。中編はしばしば無仕掛け模様で
玉との距離をテーマにする事があります。手筋作はやはり少ないと思います。さて、
問題の短編(10手台)ですが、実はこれが非常に難しい事が実感として分かりました。
手筋を決めてからの収束と、いくらかの逆算での創作がどうしても満足に完成しません。
単調さが特に目立つ手数と思います。
(5)複合条件作 過去に無防備玉の有名な作がいくつかありますが、かなりの多くが
複合条件になっています。その場合、無防備玉は従で、おまけではないものの、
やや無色に見えます。
(6)結論として、手筋作を短編で無防備玉で作ること自体に、かなりの無理がある様に
感じます。もし、好作が生まれるならば、優れた収束からの逆算になると思います。


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