「弧王の舞」はじめに
 
 初形の盤面に玉方が玉以外の駒が配置されていない条件作を、「無防備玉」「無防備
都市」と呼びます。この条件で名作と呼ばれる作品も複数あり、一見難しくないように
思えますが、通常は短編ではあまり見かけません。
 本作品集は、主に短編作の無防備玉集です。複数の作品を手がけることで、この条件の
特徴や制約がかなり理解出来たように思います。
 まず、当然ながら玉方の応手がほとんどが玉ばかりです。守備力のない玉を詰める
ことで、なおかつ狙いを手順に入れる事の難しさがあります。次に余詰等の修正に
玉方の駒を使えないことがあります。これは攻め方の駒を配置して余詰を消す事で、
どう考えても矛盾します。特に下段玉では、攻め方の駒の追加は新たな詰めを生じる
ことが付きまといます。結果的に手順の収束の難しさが生じます。余詰のない収束が
あまりなく、類似性がどうしても発生します。やむをえず、本作品集でも承知のうえで
同じ収束を用いた作品があります。
 どうしても避けられないものが合駒ですが、個人的に好きでなく苦手でもあります。
短編においては作品としてのまとまりが欠けてしまう事が多いですが、中編の手数では
有効であると感じます。
 従来では、超短編と中長編と、複合趣向で多く作られてきた「無防備玉」ですが、
単純な条件でしかも10手台の短編になると意外と作りにくい事が強く感じました。
 条件的に、変化・紛れに乏しい作品になりやすく、一見余詰等の検討は易しいそうです。
しかし実際は、玉がひとりで逃げる形になりやすく、また変化同手数や長手数が修正
しにくいこともあり、解きやすさとは別に検討は通常の作品と同様の難易度があります。
従って最終の検討には、励棋・脊尾詰の力を全面的に活用しています。
 本作品集は、全作未発表です。
 慣れない条件でもあり、作品検討や意見や感想を頂いた香龍会、その他の多くの人に
感謝します。


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