古書日記(2009/01)

古書日記『福家警部補の挨拶』

刑事コロンボの人気は本国ならず日本でも絶大です。小説的には、倒叙ミステリに属します。

倒叙ミステリは、オースチン・フリーマンが最初といわれていますが、アイルズ(バークリー)「殺意」・クロフツ「クロイドン 発12時30分」・ハル「叔母殺人事件」が3大名作といわれてきました。個人的には、前者2作はともかく、3番目は全く好きでは ありません。

日本でも多く書かれていますが、本格的に取り組んだのは鮎川哲也の短編です。これらは「チェックメイト」という題でシリーズで テレビ化されました。犯人の見落としを探偵役が如何に暴くかが謎であり、本格ミステリとなっています。

刑事コロンボは、映像で完全にこの手法を描ききったシリーズです。そのアイデアと、キャラクターとゲスト犯人の好演で非常に 多くのファンが存在します。

日本でも、同じ手法での脚本と映像化が幾つか行われ「古畑任三郎シリーズ」はファンが多いです。ただ個人的にはコロンボと比較 するとかなり甘い内容で間違いも幾つか目立ちます。

人気作品となった「刑事コロンボ」は日本でノベライズされています。今でも多く読まれています。そしてファンクラブも作られて います。ミステリ作家の大倉崇裕は、自身でノベライズを手がけてかつファンクラブ会員という非常なファンです。

その彼がファンクラブのマニアの後押しで書いているのが「福家警部補シリーズ」です。スタイルは「コロンボ」に極めて忠実 で、「コロンボシリーズ」の名場面をそれとなく忍ばせる凝りようです。小柄で地味で目立たない女性の福家警部補はコロンボ に負けないユニークなキャラクターです。

2009/1/2に、永作博美が主人公でドラマ化されます。もう本家のコロンボの新作は見られませんが、日本のコロンボが見られる という幸運が訪れました。(2009/01/01)

古書日記『松本清張生誕100年』

生誕が作家の何に影響があるのか分かりませんが、少なくても出版界のイベントにはなります。

最近では、出版・映像・展覧会等が連動して企画されます。生前の出版流通数から見て、松本清張のネームバリューは大きいでしょう。

作られた企画である事は、特定の作品のみがクローズアップされる傾向からも明らかです。知名度の高い作品がかならずしも代表作 ではないと思いますが一度方向ずけがされると、後はひとり歩きします。

松本清張に関するマスコミの評価には、色々と問題がありますが、深く掘り下げる事は何も利点がないのでしょう。

その結果、間違った高い評価とその逆の低い評価がされます。実際はもっと広い多くの著作を元に評価されるべきですが、それが 商売上の利点でないと無視となります。

記念出版は限定された作品に限られます。真により深く読もうとすると、古書の世界に入ってゆく必要があります。

幸いに古書レベルでは膨大な流通がありますが、それでも見つかりにくい作品は多数あります。(2009/01/10)

古書日記『出世復刊』

正式に出版された本が、ほとんど注目されずに絶版になる事はよく有ることです。

ところが何かのきっかけで、復刊される事があります。例えば、映像化・情報の見直し・再評価等です。

小説等では、作者が何かの作品で何かの賞を受賞したときに、それ以前の本が復刊される事が多くあります。これは作品の 再評価に近いかも知れませんが、作者の再評価というべきでしょう。

現実には、ビジネス的な戦略である事が多いでしょう。ただ、入手困難本が復刊されると言う意味で純粋に喜ぶべきでしょう。

流通の少ない初出本の保有者は、微妙かもしれません。

流通の少ない初出本が古書価的にレアになっていた時は、やや微妙ですが、初出本として人気が上がる時も有ります。(2009/01/17)

古書日記『手塚治虫作品の復刊』

復刊希望の本のジャンルに、漫画関係があります。本の冊数が多い事や全てを買いそろえにくい時期に読んだ記憶があるせいなのかは よく分かりません。

日本の漫画の初期の改革者たちは、継続的に復刊されています。それぞれに多くのファンがいますが、「手塚治虫」は復刊等が非常に 多いです。

まだレアな作品が見つかっていますし、作品の復刊や研究書や愛好者の書いた本が出版されています。

比較的に科学的な内容が多いなかで、まだ古さを感じさせないのが長く読まれる理由の1つではないかと思います。

現在増えている、大人向けのビジネス書を漫画で書いた本と同様の事が、既に行われていたのだと思います。(2009/01/22)

古書日記『初版本の価値』

古書カタログで見かける内容記載に「初版・初刷」があります。簡単言えば最初に出版されたという意味です。

勿論、その作品の初出かどうかは別です。ある出版形態での最初の印刷・出版という意味です。これには価値があるのでしょうか?。

カタログでは、重版よりも高価なのが普通ですので価値があると思い込んでいる場合もあります。

あくまでも目安でしかありません。そもそも初版しか出てない本の方が多いですし、売れていると思うように初版なしで増刷から 存在する例も報告されています。

また初版でミスがあり、増刷時に訂正されている事もあります。だからどちらが良いのかというのは、また別の問題です。

ただ古書価格にはあまり根拠がなく、需要と供給の関係で決まります。初版本を好む購入者が多いと価格は高くはなります。 (2009/01/31)