古書日記(2017/05)

「内田康夫断筆」

過去の多作作家の作品の全貌は判り難い。

現代の作家でも全貌は難しいが、幾人かの作家を想定すれば近いイメージだろう。

ミステリーのジャンルでは、赤川次郎や西村京太郎や森村誠一などがそれに当たる。

その一人と言える内田康夫が、病気で断筆宣言した。

人気作家で未完本の出版予定は驚く。

内田康夫のデビューは作品数が多い作家としては遅い。

しかも最初は自費出版だ、作品自体は流通するが初出本は流通しない。

そこから専業作家となり、多くの作品を書き続けた過程は研究要素だ。

登場人物の名をつけた大きなファンクラブと、長野にそのクラブの建物を置いた。

作者自身がその作品にしばしば登場するスタイルと、その作品に上記クラブの関連情報を載せた。

シリーズキャラクターはまるで実在するかのように一人歩きすると知名度があがる。

短い作家期間で、効率的に作品と登場キャラクターの知名度を上げた手法と作品の今後も注目だ。

(2017/05/08)

「日本ミステリー文学資料館」

光文社ビルに併設された、日本ミステリー文学資料館は活動している。

一つはベテラン作家向けの賞である。

同時に新人賞も募集と選考を行っている。

併行して大きな事が出版事業だ。

戦前の推理雑誌を10巻に収めた、文庫集を刊行した。

その後に戦後版も出した、マニアにはうれしいものだった。

江戸川乱歩絡みのアンソロジー的な企画が複数出されている。

多様なジャンルや項目分けの、企画アンソロジーが出されている。

ただし、上記のような10巻の企画よりは少ない。

今回に戦前・戦後作家の長編2作を1冊に収めた本がでた、長編は少ないので期待したい。

(2017/05/18)

「江戸川乱歩賞」

江戸川乱歩賞は第3回から、長編公募になり有名になった。

未発表であればアマ・プロを問わなく、既存作家も同名か別名での応募がある。

今年は受賞なしだが、過去では受賞なしは多数回あり珍しくない。

むしろ最終候補作が出版されて評価が高いとか、長編作家として再スタートした例はある。

公募初回(第3回)も受賞が仁木悦子「猫は知っていた」だが候補作が複数出版された。

土屋隆夫「天狗の面」、飛鳥高「疑惑の夜」だ。

有名な4作競合して選考委員4名が別を押した時には、受賞作の戸川昌子「大いなる幻影」と佐賀潜「華やかな死体」だ。

候補の天藤真「陽気な容疑者たい」と塔晶夫「虚無への供物」も出版され今では著名だ。

長編の公募の賞が増えて、作品が分散した感が強い。

歴史有る賞の意味はかわらないから質の維持の為には受賞なしもある選択だ。

(2017/05/28)