「小栗虫太郎」
小栗虫太郎は戦中に亡くなったが、以降も復刊が度々行われている。
古書市場には、初刊本以外にも、後に復刊された本が出回っている。
この作者は、文体と漢字表示とルピと含めた全体が小説の表現手段で有り、復刊内容は微妙だ。
復刊時には、読みやすい様に、文語表現とか旧字体の漢字の修正を行う。
ただし、小栗のように表現が特徴の作者は扱いが難しい。
難解な漢字とそのルピの組み合わせは最大級の特徴だ。
復刊の度に、定本とする本が同じ場合でも異なる部分が生まれやすい。
また原本の注記も本文のひとつとして重要だ。
復刊時には、注記を付ける監修や編集方法がある。
ただし、注記が原文から代わったり消えたりすると問題だ。
復刊時に追加した注記が、元から存在する注記と混在する事は避けたい。
注記は正しい訳でなく、作者の創作も含まれている。
(2018/08/01)
「大阪圭吉」
戦前の数少ない本格ミステリの作者の大阪圭吉はまだ全容が判らない。
愛好家に知られたのは、渡辺剣次と鮎川哲也が、多数の作品をアンソロジーに採った頃からだ。
同時期に専門雑誌・幻影城でも複数作が、採録された。
戦中には、本格ミステリが禁止されたので、防諜小説や捕物帳を書いたようだ。
戦前の本格ミステリは、次々と復刊されて来たが、それ以外の戦中作品はまだ、不明作が多いようだ。
単行本以外の、雑誌掲載作はそもそも、雑誌自体が確認が難しいと言われる。
長編を書いて南方出陣前に甲賀三郎に渡したとの噂があるが、文字通り幻の作品状態だ。
当時の作者は、全てが似た状況と予想される。
だが、かなりが復刊されると、異なるジャンルも読みたくなるものだ。
テキストさえあれば、待つのだが、今は見込みもないと言う。
(2018/08/11)
「木々高太郎」
木々高太郎の著書は多いが、現在では新刊で購入出来る本は少なく、たまに復刊される。
本名でも学者として著書は多く、小酒井不木と似たイメージがある。
医学の専門知識を使用して、作者の分身的な探偵役を登場させた。
次第に、探偵小説芸術論とか、文学論を提唱して行った。
それを実践するとした作品群は当時は注目された。
当時にはトリック派の江戸川乱歩と、議論する企画が行われた。
実際は互いに、議論で抑える意図は無かったように見える。
文学派を自称する木々は、直木賞や探偵作家クラブ賞を受賞した。
その作風は本格か、変格かは意見が別れる。
木々は戦後も作品を書いたが、最後期の10年は流石に書かれていない。
(2018/08/21)
「蘭郁二郎」
戦中派の蘭郁二郎はSF小説の先駆者と言われたり怪奇幻想小説の作者とも言われて、たまに復刊される。
作品によってイメージが異なるとも言えるのだが、片方のイメージ側しか読んでいない事も多い。
復刊の企画があれば選ばれる作者だが全貌は掴みにくい。
桃源社のロマンシリーズとか、三一書房の少年小説体系がある。
国書刊行会の探偵小説復刊シリーズにも、入っている。
ちくま文庫の復刊リーズの中にも、主に怪奇小説分野が選ばれている。
論創社の探偵小説選に2巻が復刊されている、これは現役だ。
最近に少年向けのSF作品の「地底大陸」が復刊予定だ。
蘭は海野十三と比較されるSFの先駆者だったり、戦前の怪奇ミステリの書き手だったり評価される。
ただし時々の復刊では総合的な双方の評価までは難しいようだ。
(2018/08/31)