古書日記(2018/10)

「島田一男」

戦後の第1期生の島田一男は、デビュー当時から執筆才能を示した。

アマチュアからのミステリ作家出身が多いジャンルだが、プロの文筆家だった。

本格ミステリを書くと同時に、新聞記者ものを多数書いて人気が出た。

ミステリのスタイルに制約されず、自由なジャンルと内容で執筆した。

作品数と執筆期間は共に多くなった。

短編の連作も多いが、長編のシリーズ化も行った。

作品は、映像ドラマ化も多く行われた。

膨大な作品を書いた作者ではよくある事だが、死後の出版状況は厳しい。

生前での新作がコンスタントに書かれた事もあり復刊は少なかった。

死後もそれが続き、流通する作品はほとんど無くなった。

そうなれば古書市場を探す事になるが、流通しているのはごく一部だ。

特に昭和30年代の一番作品が多いころは、古書市場でも見つからない。

(2018/10/10)

「黒岩涙香」

明治時代に萬朝報という新聞を発行して、自らも多才な才能を示したのが黒岩涙香だ。

当時の本は、文語体・旧仮名遣い・旧漢字体であり現在では一般には読みにくい。

それ故に、その時代の古書は読む為に購入されているのかは疑問だ。

涙香は海外の小説等を翻訳して、紹介した。

ただしそれは翻訳ではなく、翻案と呼ばれる内容だった。

場所と人物を、日本等に置き換えた、しかも原書が明らかでない場合もあった。

その結果として、翻案が知名度があっても、原作が不明の事が有った。

また原作が無く、創作小説だと後に判断されたものが当初は翻案とされた。

この涙香の翻案を、後に原作として翻案したり翻訳したされた。

読める復刊を行う時は、涙香の翻案ではなくて、その翻訳が対象となる事がある。

(2018/10/20)

「日影丈吉」

日影丈吉は、選集も全集も編まれているが、絶版も多い。

復刊される作品と、されない作品に別れているようだ。

現時点でも復刊は行われているが、それは一部の作品だ。

全集以外は、文庫化もされていない作品が複数ある。

マニア的には、1冊1万円の全集に複数冊の収録ならば選んでも良いのだが、初心者にはどうか。

古書的には、流通が少ないせいか価格が安定していない。

入手し易いのは選集だが、実は復刊される作品に偏る傾向がある。

その結果で、この作者の評価や愛好度は復刊で決まる傾向がある。

全集がある程の作者だが、復刊傾向で読者が左右される事になっている。

それでもまだ幸運なほうだろうか。

(2018/10/30)