古書日記(2018/11)

「捕物帖の復刊」

捕物帖は第二次世界大戦の前から書かれ始めて、現在でも書き継がれている。

ジャンルの定義はそれ程明確でなく、主として江戸時代から明治時代の最初までが時代だ。

短編・長編全てで雑誌連載も多い。

捕物を描くのだが、謎解きは必ずしも多くなく、通常の時代小説も多い。

ヒーロー者や人情物もその対象だ。

出版数も多いが、古書と復刊を合わせても一部の作品群を除いては過去作の流通は少ない。

新しい作者が新作を供給しているが、やはり過去作も読みたい。

捕物帖のオンデマンド出版による復刊が出た。

戦前作家の納言恭平の「七之助捕物帖」で3巻予定となっている。

出版予定では、有明夏夫、古山高麗雄、城昌幸の名がある。

作者や書かれた時代は幅広く、読者の好みも分かれそうだ。

「若さま侍」の全集化とは大事業だ。

(2018/11/09)

「横溝正史の戦前作」

横溝正史の戦前作が復刊され、古書でも流通している。

横溝は圧倒的に戦後の金田一耕助物が人気が高かった。

1970年台の角川文庫ブームでも、復刊の順位は人気シリーズの順位だった。

それがで終わると、戦前の長編が出て、次に短編集だった。

人形佐七や幻想・怪奇は一部であり、少年物は改作等で怪しい復刊だった。

テレビドラマ化は、金田一物が行われたが、それ以外は「作者の了解で、金田一登場」と変えられた。

後に文庫の続刊時には数が絞られたが、人気作が残った。

最近は、収録漏れ作の復刊が行われていたが、戦前作品が主体だ。

そして、戦前の短編集の復刊が始まり、長編も復刊の傾向が生じている。

他の作者も含めて、マイナーと言われた作品の復刊も僅かずつ行われているが、その方向性かもしれない。

(2018/11/19)

「連城三紀彦」

作家は死去すると現役の出版本が急減する。

少数の代表的な長編や受賞作だけが残る事がある。

短編集や連作集の出版は希であり、復刊も少ない。

知名度の高い本は、古書でも見つかるが、作者は知名度があっても流通しない本は多い。

復刊では短編は、再編集の作品集となる事が多い。

連城三紀彦は死後まだ年は経っていないが、現役本は限られている。

短編集の復刊という意味では恵まれた方だが、再編集で抄録作品が変わる事が多い。

この傾向は作者の存命中からであり、死後も継続して読める作品に偏りが生じている。

同時のこの作者では雑誌連載後に単行本になっていない作品がある。

そしてハードカバー出版後に、文庫にならず復刊されていない作品集があるのだ、このたびようやく「落日の門」を含む作品集が復刊される。

(2018/11/29)