古書日記(2019/01)

「初版・増刷と復刊・改訂復刊」

単行本には初出から始まり、売れ行きに応じて増刷される。

出版事情でいつかは絶版になる事が多いが、文庫版や安価版に変更されて出版される事もある。

後者を復刊と呼ぶかどうかはイメージ的な印象が大きい。

絶版されて時間が経過した頃にようやく、別の版形で出ると復刊的だが、例えばハードカバーと文庫版が共存する状態は復刊の意味は少ない。

版型変更は多大な作業だったが、電子出版が普及すると電子データでは作業性が上がった。

その影響で活字サイズ変更や活字種類変更が容易になった。

2冊の合本や、短編集の再編集も植字・印刷的には変更が容易になった。

読みやすい活字の復刊本を望む読者が増えて、出版社も対応している。

初出本特に、活字植版本については、古書愛好家でも好みが分かれる。

古書の需要と価格と市場流通量は、不安定になっているようだ。

(2019/01/08)

「横田順彌死去」

SF作家の横田順彌が死去した。

昨年にも新作を見た気がするので、印象は急死だ。

一人1ジャンルともいうべき、ハチャメチャSfの大家だ。

豊富な知識に基づくパロディと駄洒落と奇想を組み合わした複雑な作風だった。

他方ではと言うか、知識の内容というか、古典SFの研究家として著作とアンソロジーが多かった。

日本では戦前はジャンルとしてのSFは無いが、それに該当する作品はあった。

それを研究して発掘して、研究書・啓蒙書・アンソロージーでの復刊を行った。

先を歩き過ぎる傾向はあったが、研究を元にした著作でいくつかを受賞した。

ブーム的なホームズやルパンのパロディにも、関わる面があり、活躍を期待されていた。

著書は多数あるが、多くは絶版状態であり、古書を探す事になる。

(2019/01/18)

「翻案小説の登場」

外国語小説の翻訳では、現在はほとんどが完全訳だ。

昭和の初期ころは、部分部分を省いた翻訳文の出版が多かった、抄訳と呼ぶ。

省きかたは色々とあるようだが、後に完全訳が出た時に研究が発表される事がある。

それと異なるものに翻案がある。

対訳ではなくて、背景・時代・登場人物等を変える事がおおくあった。

舞台を日本に移す。時代を現代に移す、登場人物を日本人に変える。

概略のストーリーだくが同じ小説を翻案小説と呼ぶ。

作業的には「翻訳」後に「翻案」に移行させるのだろうか。

実際にも、翻訳とそれを元にした翻案の双方がある作品もある。

そして翻案小説では、翻案者が重要視される、翻訳とは異なるようだ。

(2019/01/28)