古書日記(2019/04)

「西村京太郎が吉川英治文庫賞受賞」

西村京太郎が「十津川警部シリーズ」で、吉川英治文庫賞を受賞した。

時代小説ではシリーズでの多作は多いが、ミステリーでは以外と少ない。

この作者は本の数が600と言われ、このシリーズが大半でもある。

ミステリーでは主人公が年齢を重ねると描きにくい事が1つある。

また殆どが、現代を描き、最新の社会や文化・科学・法を背景とする。

双方を合わすとそこには、矛盾が生まれるが、そこはフィクションの折り合いが必要だ。

個人の情報と、社会の情報を、リンクさせる事は無理で、妥協が必要だ。

そこでは、主人公は年を取らないか年のとり方は遅くなる。

西村京太郎のトラベルミステリーは多数のドラマ化が行われているが、ロケでの再現は変更になり多くは出来ない。

だから新刊以外は、発行当時の鉄道や時代を背景にして読む必要がある。

独特の舞台設定を楽しめる人には、膨大な作品と、その古書が待っている。

(2019/04/08)

「「孤道」完結編」

内田康夫原案の「孤道」完結編が出版された。

新聞連載中に作者・内田康夫が倒れて、翌年に未完結で出版されたのが「孤道」だ。

同時にその完結編が、公募された、その後に内田康夫の死去もあったが選考されて出版された。

内田作「孤道」の文庫化と、完結編の同時文庫出版となったが、書き下ろしの完結編がより売れるのは普通だ。

一方では、内田作品の復刊については、ぼちぼちであり今後の推移は不明だ。

作者の死後に流通が減るのは普通で有り、代表作のみの復刊になるのだろう。

内田作品は、古書での流通が多く、読みたい人は特に困らない。

中絶策の公募は希だが、別人による書き継ぎはミステリ界では多い。

小栗虫太郎と笹沢佐保、山田風太郎と高木彬光、天藤真と草野唯雄が例だ。

書き継ぎ作品の扱いはどうなるのは、今回が前例となるのだろうか。

(2019/04/18)

「推理作家協会賞」

第72回日本推理作家協会賞が発表された。

第1回が横溝正史「本陣殺人事件」からだから歴史が長い、名称や部門やシステムの変更がありながら継続している。

途中から複数回の受賞がなくなっている、連作集は長編の扱いになっている。

歴史が長くとも意外な作者が受賞していない事も多い。

受賞作の知名度が必ずしも高くなく、受賞作でも復刊も現役でもないものは古書を探す事になる。

「推理作家協会賞受賞作」が編まれたがそれも今では、古書で探す事が多い、。

評論その他部門や長編部門には、大作が含まれるので、全集にすると、短編との間でバランスが悪い。

短編部門は少ない冊数にまとまってしまう。

長編公募賞では、長さが限定された長編が揃うので、全集や叢書が編みやすい。

地味な賞とされる事は多いが、作品と作者は歴史と記録に残る。

(2019/04/28)