古書日記(2019/07)

「高木彬光の捕物帳」

捕物帳と呼ばれる小説は、継続的に書かれているが、復刊も行われている。

ジャンルとしての定義や条件は明確でなく、個人の好みはバラバラだ。

半七捕物帳はホームズ談を江戸時代を背景に描いた趣がある。

その点から見ると、探偵小説作家との相性は高そうで、多数の作者が書いて来た。

本格ミステリを中心に多彩なジャンルを書いた、高木彬光にも捕物帳がある。

千両文七捕物帳は約半数が春陽文庫で2冊出版されていて、古書での流通はあった。

それ以外の作品は雑誌から探すしかなかった。

今回に単行本初出を含めた全作品が3冊に分けてオンデマンドで復刊される。

第1巻が出版されて14作が収録された。

それによれば、作品は34作あり、その他に「私版天保六花選」が4作とされている。

(2019/07/07)

「ソノラマ文庫」

少年小説や少女小説の復刊や、古書が流通し始めている。

知名度のある作者の作品でも、以前は表にでなかっただけなのが、真相だ。

少年小説の叢書や文庫は、内容がある程度予想できるのでみなおされている。

ソノラマ文庫は長く続いた、少年少女向け文庫だ。

ページ数や内容的には、重厚ではないが多彩な内容のシリーズだ。

作品数の多い有名作家でも、この文庫の古書以外に同じタイトルが出ていない本が多い。

特徴のある色のカバーの背表紙で古書店でも目に付きやすい。

紙質から痛みやすいのだが、逆に探求する人も多い。

ハードカバーよりも愛好者が多いタイトルも含まれる。

(2019/07/17)

「渡辺啓助作品の復刊」

探偵小説の日本登場の頃から100才で死去するまで長期に活躍したのが渡辺啓助だ。

断続的に作品集が出されてきたが、全貌は不明で読めない作品も多い。

今年に重複のない3冊の短篇集が出された。

20年前に「聖悪魔」と「渡辺啓助怪奇小説集」がでている。

出版予告と、既にでた作品集の内容からは、それとの重複は極力避ける方針のようだ。

復刊が同じタイトルの繰り返しの作者も存在するが、重複を避ける内容はそれ以上に魅力的だ。

変格探偵小説の作者だが、怪奇・幻想・SF等の広い分野を書いている。

複数の作品集で、次第に全体が判って来たようだ。

今回の復刊は喜ばしいが次は20年後になるのだろうか。

(2019/07/27)