古書日記(2019/10)

「河野典正の復刊短篇集」

日本でのハードボイルド小説の初期に活躍した一人が、河野典正だ。

ただしその書くジャンルは多彩であり、時期によりどんどん拡がって行く。

河野のデビュー時は、ハードボイルドスタイルの小説だと言われた。

その頃の短篇を中心に集めて作品集が編まれた。

日本でのミステリが大きく拡がった時代だ。

そのもう一つにSFがあり、河野はそれにも参加してゆく事になる。

デビュー当時に既に多数の作品を書いたようだ。

雑誌・宝石に掲載された作品や、年間アンソロジーに載った作品は読んだ記憶がある。

イメージの作品というか、謎解きとは当時はなだ無縁だが、記憶に残りやすい。

(2019/10/06)

「生島治郎の「黄土の奔流」」

昭和30-50年の作品の復刊がこつこつと行われている。

少なくとも昭和50年頃のミステリーブーム時に一度は復刊されている事が多い。

長編は初出単行本と復刊の文庫本が、ある作品が多い。

短篇は作者毎に、短篇集の出版状況が大きく変わる。

生島治郎は知名度も作品数も、高く多い方だが現在では復刊状況は悪い。

古書を探せば、そこそこは見つかる状態だ。

「黄土の奔流」は日本の冒険小説の代表作の1つだ、正確にはロールプレイ式の代表だ。

主人公の冒険を波乱盤上に追いながら描いて行く、知名度のみ高いが漸く復刊された。

冒険小説はヒギンズ以降は、複数の人物・事件を追い、最後に収束するモジュラー方式が主流になっている。

(2019/10/16)

「文庫版の本格推理と新・本格推理」

文庫版で、「本格推理」と、「新・本格推理」というアンソロジーがあった。

「本格推理」は鮎川哲也が本格ミステリ短篇を募集して文庫版で編んだアンソロジーだ。

「新・本格推理」は上記を引き継いで二階堂黎人が編んだアンソロジーだ。

基本はアマチュア作家が応募していたが、一部は新人作家であり、作家の変名も有ったようだ。

またアマチュア作家の中からプロデビューも行われた。

応募作家が、後に他の機会・・・多くは公募新人賞でデビューしたケースも複数あった。

一部は他の短編集に採られた事もあったが、基本はこれきりとなった。

だから基本は古書で入手して読むしかない。

選者の好みが大きい方式であり、マニアックになる傾向は魅力ともマイナスともなった。

(2019/10/26)