「小森収編「短篇ミステリの200年 1」」
江戸川乱歩編の「世界短篇傑作集」全5巻は、ロングセラーの文庫本だ。
その5冊の改訂新訳が揃って行われ、他の短編集に載っている作品は省かれていたが改訂で掲載された。
また全てが経年順に並べかえられた、それは判り易い指針とも言える。
その5冊を意識した(編者が述べている)「短篇ミステリの200年」全5冊が編まれるという。
第1巻目が出たが、相当に困惑している。
540ページの1/3を占める評論が異様だ、。
13作が掲載されているが、ミステリが無い、奇妙な味と言うがミステリとは言いがたい。
1800年代の作品から始まるが年代が飛び、1940年までの作品だ、経年順ではない。
ミステリなしで1930年代を通り過ぎてしまった。ミステリ作品のない、ミステリ・アンソロジーとは驚いた。
(2020/03/04)
「榊原志保美「青月記」」
榊原志保美は新刊が出なくなり、書店から消えたので、古書でしか読めない。
途中で名前の文字を変えたので、2つの名前が存在する。
怪奇・幻想の傾向が大きく、題材が古典芸能や舞踊に比重が高い。
家元制度や生まれながらの地位を題材にするが、そこに男色が絡み発表時代によっては扱われにくいかもしれない。
ミステリやエンターティメントに入れられた時もあった様だが、今はそうともされていない。
古書を見ると、あまり見かけない出版社の本が多い。
変わった装丁の本が多いとも感じる。
「青月記」はデビュー作を含む作品集で、アクが強い本だ。
文庫化されている本は、怪奇・幻想色が濃くともアクは抑えられている事が多い。
(2020/03/14)
「小泉喜美子「殺さずにはいられない」」
小泉喜美子「殺さずにはいられない」は作者の死の翌年(1986)に出版された追悼作品集だ。
作者が生前に書き下ろしていたエッセイ「ミステリーひねくれベスト10」も掲載されている。
2017年に文庫版で再編集復刊された。
初出単行本は、シリーズではない色々な内容の短篇があつめられた短篇集だった。
復刊本では、加えて情報誌に連載された「オフィス・ショート・シュート」6作が追加収録された、それは単行本初収録だ。
全てを含めて、ミステリー色はばらばらであり、薄いものも多いが、元元が犯罪小説やモダンな小説スタイルが多い。
エッセイのひねくれベスト10は流石に異様な選択だ、作者名を知っているのが6名で、読んだ作品が1作では感想も言いがたい。
作品数は多くないが、その多数が復刊されて来ている作者だ。
(2020/03/24)