古書日記(2020/04)

「森村誠一「高層の死角」」

森村誠一は400冊を越える著書があるベストセラー作家で有り、復刊率も高い。

森村誠一は自身でウエブサイトを開設して、そこで著書リストを中心に資料を公開している。

そのリストでは2017年の前半に400冊を越えているが、初出・復刊共にリストアップされている。

「高層の死角」は処女作ではないが、江戸川乱歩賞受賞作であり、いわゆる出世作だ。

作者はその後に多数のジャンルと手法の作品うぃ発表して行くが、本作とその後しばらくは本格ミステリ味が濃い。

密室とダイイングメッセージと交通機関アリバイとホテルのチェックイン時間アリバイトリックが並び、トリック密度が高い。

一方では名探偵を設定せず、警視庁捜査課と刑事らが組織捜査する警察小説の手法も導入していた。

広域捜査・組織捜査で、離れた地点の移動手段で可能性のあるものを全て調べて消して行く捜査方法は完全に警察小説の手法だ。

森村作品ではその後に、レギュラー的な刑事が複数登場して、それぞれに担当事件を通してコラボして行くが、刑事探偵の手法は本作でも現れ始めている。

(2020/04/03)

「楠田匡介「いつ殺される」」

楠田匡介「いつ殺される」は1957年出版されたが、2017年に漸く文庫版で復刊された。

古書の世界でしか読めなかった本が、60年振りで復刊された。

楠田はミステリのマニア的な作家であり、交通事故死後は復刊は少なかった。

ただし、ゆっくりと復刊を重ねて来た事で、テキストの入手は改善されて来た。

文庫版の「楠田匡介作品集」と、大下宇陀児とのコラボのレガシーと題する文庫版での「模型人形殺人事件」がある。

少部数の同人出版の短篇集や、コピー版出版も行われている。

アンソロジーの常連作家だったが、少しずつ改善されている。

全貌が現れる事はないかもしれないが、読めない作家ではなくなりつつある。

復刊も時間が経つとレア本になる事は仕方はない。

(2020/04/13)

「阿部徳蔵「魔術小説集」」

2017年に同人出版で、阿部徳蔵の作品集が3冊出版された。

阿部徳蔵は大正末期から昭和10年台に作品を発表した。

私個人は、鮎川哲也編の怪奇アンソロジーで名前を見た事がある。

同人出版では「魔術小説集」と名付けられたが、阿部が奇術にのめりこみ小説にもその影響が強い事が理由だ。

阿部の小説はミステリ・探偵小説に入らないので、復刊やアンソロジーの取られる事は少なかった。

奇術の題材を多彩な切り口で取りあげるスタイルは、空想的だったり詐欺的だったりドキュメント風だったりが混ざる。

それは展開と終わりを予想させないので、ミステリ要素の含まれている。

ミステリ作家には奇術愛好家が複数いるが、昭和初期の奇術小説は今でも面白いと思った。

(2020/04/23)