古書日記(2020/07)

「女性ミステリー作家傑作選」

1997年に女性ミステリー作家のアンソロジーが「赤のミステリー」「白のミステリー」の2冊編まれた。

その後に「女性ミステリー作家傑作選」と題名を変えて、3冊に再編集されて文庫化された。

登場する作家は、昭和30年代の江戸川乱歩賞絡みの作家の仁木悦子・新章文子・戸川昌子から40年位となっている。

乱歩賞作家は以降も、桐野夏生・栗本薫・山崎洋子がいる、夏樹静子や山村美紗も候補作がきっかけだ。

公募長編賞絡みは他にも多く、横溝正史賞の斎藤澪や、鮎川哲也賞の今村彩(ゼロ回と言われる)・加納朋子・近藤史恵がいる。

他の長編賞は黒崎香E柴田よしき・永井するみ・乃南アサ・宮部みゆき等多く、新人公募は影響が大きい。。

本格派は多くは無いが、多様化したミステリに於いて女性作家は活躍している。

20年後の現在見ると故人が増えているが、その分かそれ以上に新しい作家は増えているので再度の企画も有りだろう。

(2020/07/02)

「ケプラー「ケプラーの夢」」

天文学者のヨハネス・ケプラーが書いた空想小説で、1634年に死後出版された原題は「夢」で、1967年の英語訳が「ケプラーの夢」の題だった。

長めの短篇程度の長さの作品だが、それに作者自身の注が付き(かなりの量)、それに翻訳と出版毎に注が追加されて来た。

全部を合わせて、それに解説等が付くと長編となっている。

内容は「月の天文学」と解説される、月で天文観測した時の様子・観測結果を天文学の知識で想像して描いている。

ケプラー自身が惑星運行の「ケプラーの3原則」の発見者であり、その記述はその知識に基づいている。

一方ではニュートンの万有引力発見の前であり、科学技術は発達しておらずロケットは存在していない。

月に行く方法に悩んだケプラーは、なんと自分の母親が霊能者であるとして、その能力で月に行くとした。

だが時代的にも、またケプラーの知識も不思議な事だったので、霊の能力が信じられてしまい、母親が迫害にあったとされている。

内容は今でも簡単ではなく、結果的に長く詳しい注が必要で有り、それが以降も追加され続いて来ている。

(2020/07/12)

「辻真先「幽霊の殺人」」

ミステリ作家の辻真先には他にも幾つかの顔がある。その一つが脚本家だ

ミステリ演劇の脚本も書くが、演劇を主題にしたミステリも書いている。

そして相互乗り入れ的な作品が、「幽霊の殺人」「天使の殺人」「人形の殺人」だ。

「幽霊の殺人」は演劇集団の公演「幽霊の殺人」を描く、そこでは俳優らが芸名のままの役で登場する。

既に死んで居る者は幽霊で登場するが、普通の人間には見えないし疎通も出来ないが、幽霊から人間は見える。

話しが進行するに連れて殺人事件が起きるが、死者は幽霊となり幽霊の立場に変わる。

舞台上の進行と、舞台外の進行が同じ名前で進み、かつ幽霊も加わる事になる。

二重設定に架空設定が重なり、異様なミステリが展開して行く。

(2020/07/22)