古書日記(2020/11)

「飛鳥高「疑惑の夜」」

飛鳥高はいくつか長編があるが、「細い赤い糸」だけが多数復刊されていた。

短編集についても同じ状況だったが20年前に復刊があった、そもそも短編集は少なかった

数年前から漸くに作品集の刊行が行われて来たが、単行本初収録は多い。

「飛鳥高探偵小説選集」が時間をかけて5冊刊行されて、漸くに状況が変わりつつある。

5冊に、1長編ずつが収録されたので、5作が復刊されたことになる。

「疑惑の夜」「死を運ぶトラック」死刑台にどうぞ」「青いリボンの誘惑」「ガラスの檻」だ。

11長編だから残りは、6作品だがさすがに難しいだろうか。

そもそも部数が少ないので、依然としてマニアにもみ読まれるという事情は大きくは変わらない。

(2020/11/09)

「鮎川哲也「呪縛再現」」

鮎川哲也「呪縛再現」は中編だが、広い意味では代表作長編の原型作品だ。

それもあって、作品の存在は知られていたが、作者が復刊を望んでいなかったのだろう。

作者の死後に出版された個人作品集の中に、漸くされた。

2020年に文庫本「りら荘殺人事件」に収録されて、広く入手が可能になった。

鮎川作品のレギュラー探偵の、星影と鬼貫警部が双方登場する作品である特徴もある。

作中で使用されているトリックが、その後に別の作品として長編に書かれたことで作者が再録を止めたのだろう。

鮎川は短編や中編の、長編化は一般的手法として度々行ている。

その原型の短編は作者的には、再録しないのだが、編集レベルでのちに収録される事が多い。

他の作者の原型作品が復刊されている現在に、鮎川作品も復刊はうれしい。

(2020/11/20)

「北森鴻「狐罠」」

北森鴻の没後10年で、代表作シリーズの1つの宇佐見陶子シリーズ4作が復刊されると言う。

作者の死で新刊で読めなくなっていたが10年は復刊の始まりになって欲しい。。

骨董品の売買斡旋業というか、店舗を持たない流れ商売の旗師というのはミステリ的な設定だ。

そして骨董の分野は、歴史・美術・技術・鑑定・資料・贋作・詐欺もかかわる。

学問という表の社会と、裏の社会とも言える人物が混ざっての鑑定と収集はサスペンス色も多い。

この作者の中のどのシリーズと作品が、復刊の手順の中で広がって行くのかは興味もある。

現代小説の中の、歴史・時代性は好きなジャンルだ。

(2020/11/29)