古書日記(2020/12)

「宮野村子「鯉沼家の惨劇」」

宮野村子の短編集「無邪気な殺人鬼」が少部数出版された。

その解説(あとがき)では、単行本未収録作が約50作あるとされた。

しかも未発表作品も収録されており、単行本が足りない作者の様だ。

宮野は著書はかなりある方だが、ほぼ初出本ばかりでレア本となっている。

古書でも流通は少なく、出てもいずれも高価なものばかりだ。

復刊をの希望はあるが、前述のように未収録作品が多いならばそちらが先のようだ。

入手困難の宮野の長編では唯一、「鯉沼家の惨劇」のみが複数の復刊歴がある。

それが本格探偵小説味があるので、誤解されやすいが、心理描写が多い変格探偵小説だ。

(2020/12/09)

「中町信「悲痛の殺意」」

中町信は復刊率も文庫化率も高くない作家だったが、2000代後半の作者の死の直前ころにやや改善され始めた。

その時の文庫復刊時に、「・・・・の殺意」と題を変えたが、それが死後の復刊でも行われている。

もともとが少ない復刊で、題名変更が多かった事もあり、古い読者には題名は混乱してまう。

最近の復刊は「奥只見温泉郷殺人事件」から「悲痛の殺意」である。

個人的には傑作だと思うし、文庫復刊はうれしいが題名からは作品は連想できず、やはり混乱する。

中町作品には地名がつく作品は多いが、そこが舞台という意味だ。

改題するならば、原題か内容を連想できる題名が望ましいと思う。

中町作品は中期以降は文庫化されていない作品が続くが、そこの文庫化までは難しいのだろう。

約40冊の著書では、復では一桁になるので、やはり古書で読むしかない。

(2020/12/19)

「暗号小説「秘文字」」

「秘文字」は短編3作からなる、暗号ミステリ作品集だ。

初出は、全ての作品が暗号化されており、購入者が出版社から普通文を取り寄せる必要がある。

次の版では、解答編は同梱されたが、袋閉じとなっている。

その後に、双方が普通に載った方式になったようだ。

まさか暗号を全て解く人はいないと思うが、レア本と言える。

この本は古書で探すと、版でも、古書状態でも色々なケースがある。

泡坂・日影・中井という作者は人気があり、微妙な本だ。

(2020/12/29)