「鷲尾三郎「屍の記録」」
昭和20年代に登場したデビューそた戦後の作家には多くの作品を発表したが、復刊が少ない作者もいる。
鷲尾三郎はその一人であり、文庫化がされておらず、勿論全集はない。
復刊はあった様だが、改題されていたとされ、作品リストや発表履歴では分りにくい。
2000年代に短編集「文殊の罠」と、長編を含む作品集「屍の記録」と、もう1冊の書部数出版がある。
長編「屍の記録」は公募長編で書かれ、後に春陽堂のミステリ全集の1冊として書きおろし出版された。
改題も含めて、複数回の復刊されたが、文庫化はされなかった。
鷲尾作品は、本の履歴が分かり難い事と、古書的にはレア本が多いの、マニア向きの面がある。
知名度の高い本作も、復刊されても絶版になり、古書で探す作品となりがちだ。
(2021/01/08)
「山田風太郎「達磨峠の事件」」
山田風太郎の復刊は、継続的に行われて来たが、そのジャンルは変化している。
山田のデビュー作は「達磨峠の事件」であり、戦後の第1回の雑誌・宝石の懸賞応募作だ。
本作は本格ミステリだが、それは作者のその後の多彩なジャンルでの活躍からはむしろ意外だ。
山田のミステリ文学大賞受賞に合わせて、刊行された光文社文庫の全10巻の「山田風太郎ミステリ傑作選」はミステリジャンルの選集だ。
全集ではないがその事情は、同時並行しての復刊企画だあった事による。
数量が多くジャンルも多彩な山田作品を、入手して読みきる事は難しい。
そこでは初出本探しは難しく、選集的な企画が効率が良かった。
文庫での10巻選集は、ミステリ・ジャンルの作品を網羅あるいは、収録されていない作も言及されている。
その刊行からまもなく20年が経過して、それも古書での入手となっている。
(2021/01/19)
「ディクスン・カー「エドモンド・ゴドフリー卿殺害事件」」
ディクスン・カーは後期に歴史に興味を持ち、歴史ミステリも書いている。
「エドモンド・ゴドフリー卿殺害事件」は17世紀のイギリスに於ける、判事殺害事件の歴史小説だ。
判事の死が、政治問題、宗教問題、皇室問題・・・多様な容疑が絡んで進行する。
真相が分からない事があるが、当時の偽証やでっち上げが出回った社会の影響も大きかった。
カーはその歴史の謎を小説風にまとめた、そして最後に別の視点から自らの推理を展開した。
日本語訳は1991年にハードカバーで出版された、そして15年後に別の出版社から文庫版で復刊された。
そこにはダグラス・グリーンの序文と跋文が追加されたが、そこではカーの作以後に見つかった証拠での新たな展開が書かれている。
(2021/01/28)