古書日記(2021/07)

「小松左京「日本沈没」」

小松左京は昭和30年代から小説を発表していて、昭和40年代後半には既にSF小説での重鎮だった。

大長編「日本沈没」は昭和48年に書き下ろしの上下2冊本で刊行されて、大きな話題となり日本推理協会賞を受賞した。

当時は大陸移動説やプレート・テクトニクス理論が静かに話題になって来た時期でもあり、早くから関心のあった小松だったが9年かけて完成したとも言われる。

その特徴は最新の物理理論を取り入れて、しかも時間をかけて日本列島が沈没する事に設定してその様子を描いた事がある。

大ヒットして、テレビドラマと映画化されたが、この後に小松作品は過去発表作を含めて複数映画された。

初出本はノベルス本の上下2冊であり、保有本は上巻が発売2月後の50版であり、下巻は4月後の166版だから、すさまじい。

小説は「第1部・完」で終わっているが、小松自身では続編は書かれなかった。

2000年代に入り、高齢の小松に代わり、谷甲州が執筆した「日本沈没 第二部」がプロジェクトとして出版された。

(2021/07/08)

「天藤真「善人たちの夜」」

天藤真は昭和37年に短編でデビューして、昭和54年に長編「大誘拐」で日本推理作家協会賞を受賞した。

昭和58年に死去したが、その作品は角川文庫にほぼ収録された。

さらには平成以降に創元推理文庫にもほとんどの作品が収録された。

長編「善人たちの夜」は作者の後期の作品で、昭和55年に出版された。

ユーモアな内容で代理妻計画の顛末を描いた、天藤ならではの作品だった。

だが1996年(平成8年)の創元推理文庫版では、初刊時に長すぎるという理由で削除されたという、未定稿200枚が添付された。

削除された部分には該当ページが記載されているが、該当する行は不明であり、連続して小説として読むことは厄介で、ロングバージョンの出版を望む。

創元版では死後に明かされたハウスネーム・鷹見緋沙子名義の「わが師はサタン」も出版されたが、それ以外の詳しい情報はない。

天藤は作品が残り易い環境である面では幸運な作家だが、細部では色々と不満もある。

(2021/07/18)

「狩久「不必要な犯罪」」

狩久は戦後の昭和20年代にデビューしたミステリ作家であり、昭和52年死去までに複数のジャンルで幅広く作品を書いた。

生前の単行本は少なく、死後に「狩久探偵小説選」1冊と、「狩久全集」7冊本が出たが、後者は見た事はない。

作風が多彩で、アンソロジーで馴染みの作者だが、少ない作品では全体像は全く判らない。

途中に作品を発表しなかった時期があったが、昭和50年に雑誌「幻影城」から再度作品を発表し始めた。

その中で書き下ろし長編「不必要な犯罪」を発表した。

フランス装のアンカットという装丁だったが、見慣れない私は袋閉じを1ページずつ切るのが結構面倒だった。

だから保有している本は側面が毛羽立っている、数冊同じ装丁で出版されたが落丁として返品された事もあり、普通のハードカバーに変わった。

内容は短い序章と「探偵小説「不必要な犯罪」」の2部構成だが、本格ミステリと犯罪実話と官能小説と私小説が交わった奇妙な世界を作った。

死後に雑誌の追悼文で長編2作目が完成している情報があり一部が発表され、後に「狩久全集」に長編が収録された様だが、入手して読みことは難しいようだ。

(2021/07/28)