古書日記(2021/12)

「佐野洋「同名異人の四人が死んだ」」

佐野洋は1958年に短編でデビューして、翌年に長編「一本の鉛」を発表した。

佐野は変動期の時代に、幅広いジャンルで幅広い手法と趣向を導入した作品を書いた。

その幅は非常に広かったが、半面にはそれぞれの分野では単品作で終わる事が多かった。

佐野は短編の名手としても知られており、短編集も多く、年間アンソロジーの常連でもあった。

評論家としても、長期連載となった「推理日記」で作家の視線から作品の評論を書いた。

現在では多彩故か、復刊される機会は少ない。

「同名異人の四人が死んだ」1973年に「推理作家特別書下し」の第1回として発表された箱入り変形の本だ。

同名のシリーズが繰り返しあるが、この時は装丁が特徴で多数の作家が参加している。

(2021/12/05)

「梶龍雄「殺人魔術」」

梶龍雄は江戸川乱歩賞受賞以降は、書き下ろし長編を中心に作品を発表した。

最後期には、同一主人公の連作集や、連作長編も発表した。

シリーズの連作ではない、純粋の短編集は意外と少ない。

短編集には「殺人魔術」がある、昭和59年発行であり昭和55年から昭和57年の雑誌発表作8作を収録した。

作品だけのシンプルな本だが、カバーでの紹介には「探偵小説」「トリック」「謎解き」等の言葉が並んでいる。

表題作「殺人魔術」は地方回りのマジックショーを演じるそっくりの姉妹の周囲で起きた事件を、追っかけや刑事がからみ展開する。

短編集「男と女の探偵小説」も同じコンセプトの短編集で、昭和54年から60年までの8作を収録して昭和62年に発行された。

こちらは色々な趣向を凝らした「傑作ミステリ」との紹介されている。

作者は戦後直ぐのデビューであり乱歩賞以前にも短編や、ジュブナイルを書いている、それを含めて刊行された短編集は少ない。

(2021/12/15)

「多岐川恭「濡れた心」」

多岐川恭は1954年に、白家太郎名義でデビューして、1958年の長編「氷柱」から多岐川名義に変えた。

同年に長編「濡れた心」で江戸川乱歩賞を受賞して、さらに短編集「落ちる」で直木賞を受賞した。

初期の集中的な活躍が目立つが、以降も多彩なジャンルで多くの作品を発表した

当時は主要な3つの賞、「乱歩賞」「直木賞」「日本推理作家協会賞」を3冠と呼ばれたが、協会賞は受賞していない。

候補になる度に、最高傑作・代表作ではないと評価されており、デビュー時の受賞歴の影響もありそうだ。

保有する「濡れた心」は当時に、膨大なシリーズとなっていた、新書版のロマン・ブックスだ。

単行本が初出だが、後年に出版社が同じロマン・ブックスで出版されている。

カバーに著者紹介と、梗概が掲載されているだけの簡単な作りとなっている。

作者は早くから、時代小説と捕物帳のシリーズや作品も多く書いている。

(2021/12/25)