「南部樹未子「火刑」」
南部樹未子はサスペンス味が濃い作品をミステリーとして発表しているが、非ミステリとされる作品も多くある。
小説デビューした当時の作品「ある自殺」や「流氷の街」で死を扱っていた事から、ミステリー執筆を勧められた。
テーマが極端に変わらず、作者のミステリへの意識の差がある程度の差だが、ミステリーとして分類された。
ミステリーには「乳色の墓標」「砕かれた女」「狂った弓」などがある。
これらは、ミステリーの叢書やノベルスから発表されている。
短編「汽笛が響く」は蓋然性の死を描いた代表作とされる。
長編「火刑」は「日本ミステリー事典」ではミステリーにはなっていない、女性が家庭と地域から独立を図るが病気にも襲われる。
死と向き合う女性の生き方を描いている、主人公の生き方を探すストーリーはミステリーに分類されないのだろう。
(2022/01/04)
「新章文子「バック・ミラー」」
新章文子は江戸川乱歩賞受賞を長編「危険な関係」で受賞した。
それ以降は、作品数は多くはないが、作品を発表した。
長編は6作で少なく、短編は発表はかなりあるが、短編集は3冊と少ない、また復刊も少ない。
作風は女性の視点で、心理描写を行う、サスペンス作品と言える。
長編「バック・ミラー」は昭和36年の作品で、書き下ろし推理小説全集の企画の1冊だ。
姉妹ら家族の近くで、自殺?事件が起きて、話が展開する。
周囲への波紋が続いてゆき、最後にやはり事故か自殺か判らない死が起きて、さらにその真相が判り終わる。
本来は函入りだが、保有する本はそれは無く、本文だけのシンプルな本だ。
(2022/01/14)
「柴田錬三郎「幽霊紳士」」
柴田錬三郎は1938年に小説を発表し始めたが、戦争後に専業となり1952年の直木賞受賞で著名作家となった。
1956年から開始した「眠狂四郎」を主人公にした時代小説シリーズが人気となり、長期連載となった。
特異なキャラクターと一話完結のシリーズと、ミステリー手法を使った時代小説という特徴があった
デビュー初期を中心に、ミステリー作品があり、1960年の「幽霊紳士」はその代表作だ。
灰色の老紳士がトリックや事件を解決する、一話は短く全12話で作品集が構成される。
刑事・杉戸三郎や私立探偵・猪木敬吉が適時登場して、脇役を務める。
短い作品で、一話完結での切れ味の追及は「眠狂四郎」シリーズと共通している。
保有する本は、1968年発行の変形のノベルスだ、柴田の本も多数含む叢書の1冊だ。
カバー以外は特別なものがない、シンプルな本だ。
(2022/01/24)