「日下圭介「鶯を呼ぶ少年」」
日下圭介は1975年に「蝶たちは今・・」で江戸川乱歩賞を受賞してデビューした。
基本は本格推理で、動物や植物の習性や生態をテーマにした作品が多い、さらにそれをモチーフ・イメージにした内容も多い。
それはトリックや謎を作るのではなく謎を見つける事だと、作者は言っている。
1982年に短編「木に登る犬」「鶯を呼ぶ少年」で日本推理作家協会賞を受賞した。
短編集「鶯を呼ぶ少年」は受賞後に編まれた短編集で、受賞帯があり「抒情ミステリー」と紹介されて7作が収録されている。
謎を見つけるという作風はその後に、歴史に眼を向けて、歴史の謎をテーマにした作品を書いた。
さらには文芸作品をテーマにした作品を同じ手法で書いた。
(2022/03/05)
「高村薫「神の火」」
高村薫は1989年に日本推理サスペンス大賞受賞でデビューした。
デビューから長編では、長めの作品が多く重量感のある、冒険小説・サスペンスと言われた。
その後、刑事・合田を主人公にした作品を書いて警察小説の視点も出来たが、それも含む的な意味合いが強い。
長い長編は、その後も加速して「晴子情話」「新リア王」等が続いた。。
2010年代は作品数は減っているが、大作「土の記」等があり、さらには評論活動も引き続き行っている。
初期の作品は執筆・発表・刊行の順序がやや複雑だが、デビュー「黄金を抱いてとべ」、2作目「神の火」、4作目「リビエラを撃て」と続く。
「神の火」は題名の通り原発をテーマにして、それを止める為に侵入する2人組が描かれる。
1991年発表、その後全面改稿で文庫化された事で元版は絶版になり、その後に1996年文庫版を基に単行本として出版された。
所有本はその1996年版だ、500ページを越える大作で、気軽には読み難い重量感がある。
(2022/03/15)
「仁木悦子「粘土の犬」」
仁木悦子は、昭和32年11月に第3回江戸川乱歩賞受賞作「猫は知っていた」でデビューした。
女性本格ミステリ作家は少ない時代であった事や、当時病床の寝たきり作家だったりで話題になった。
出版前から話題になり雑誌等への原稿依頼が先行してあった、当時の状況は作者自身がエッセイで書いている。
短編集「粘土の犬」はデビュー時に発表した短編5作からなる作品集で、昭和33年7年出版だ。
「粘土の犬」はエッセイでも登場する最初に書かれた短編で、長編「猫・・」とは異なる作風だが代表作とされている。
「黄色い花」等の3作は、長編「猫・・・」にも登場する仁木雄太郎と悦子兄妹のシリーズでありその後も書き継がれる事になった。
「かあちゃんは犯人でない」は子供の視点から書かれた本格ミステリで、このジャンルも作者は書き続けた。
「粘土の犬」は作者のその後の作品の傾向を示す作品集とばった。。
初版単行本は、長編「猫・・」が白地に猫の絵の箱で、「粘土の犬」は同じ白地に動物の足跡の箱であり、似た印象だ。
(2022/03/25)