古書日記(2022/06)

「藤木靖子「危ない恋人」」

藤木靖子は1960年にミステリ短編賞でデビューした。

ミステリの長編は1961年の1作ろ、1962年の本作「危ない恋人」の2作だけだ。

その後1970年ごろからジュニア小説に変わり、以降は主体に書き始めて、コバルト文庫に多数の作品を書いた。

ミステリは心理サスペンスであり、女性主人公の心の動きとそれに伴う行動を描く。

文章と表現的には、時にユーモラスだが、同時に底知れぬ悪意をもまた描く。

「危ない恋人」は東都ミステリ叢書に書いた2冊目で、十返肇のカバー分と作者近影と紹介と、作者後書きがある。

作者の出身地・高松に近い架空の街・松笠市を舞台に、同性愛と不倫が絡む事件を描く。

速記や身の上相談を題材にして、日常生活の中のトラブルを描いた。

(2022/06/03)

「福本和也「啜り泣く石」」

福本和也は非ミステリがスタートで、漫画の原作を行い、そして本作で推理分野にもデビューした。

「啜り泣く石」は東都ミステリ叢書の1冊で、帯文には「本格推理長編」と書かれている。

木々高太郎の帯文では「推理小説社会派の新しい道」とあり、尾崎秀樹の帯文では作品内容には触れていない。

作者の近影と紹介があり、さらに後書きでは「本格物以外は探偵小説でない偏見が私を捕らえて離さない。話があった時に 推理小説でなくてもいいかと念をおした」としている。

作者にとっては「試作品1号」だったようだ、昭和38年という時代背景を踏まえてもジャンルの事は悩ましい。

作者はその後に、航空ミステリの分野で作品を書いた、さらには極道の世界も題材とした。

探偵小説や本格ミステリでは無いが、ミステリの作品も書き続けた。

作者は集中して発表する時期があった反面に、発表だ途絶えたり、他に興味が移ったりもあったようだ。

結果的には多数の作品を残した。

(2022/06/13)

「加納一朗「シャット・アウト」」

加納一朗は同人誌から書き始めて、商業誌には1960年のデビューになる。

デビュー時から直ぐに、SFとサスペンス推理小説を多数書いた。

「シャット・アウト」は1963年のサスペンス長編で東都ミステリ叢書の1作だ。

変形新書サイズで作者のあとがきと、紹介と写真、と日影丈吉の短文がある。

株価暴落から起きるパニックと殺人事件を描く、作者は全て空想としている。

作者は多数の作品を書いたが、後には少年少女向けの作品を書き、さらには脚本も書いた。

1983年のパスティーシュ・「ホック氏の異郷の冒険」で推理作家協会賞を受賞した。

以降も、ジャンルを広げて行きながら、多数の作品を書いた。

(2022/06/23)

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