「島久平「密室の妻」」
島久平は関西を中心に活動したミステリ作家で、関西探偵作家クラブ創設者の一人だ。
1948年に短編でデビューして、1950年に長編「硝子の家」を発表した。
初期ミステリ作品では、私立探偵・伝法義太郎が登場している。
その後はミステリに加えて、時代小説や少年向け小説やユーモア小説や広いジャンルの作品を書いた。
「密室の妻」は東都ミステリ叢書の1冊で1962年に出版された。
この叢書としては長めの作品で、作者「あとがき」と、作者紹介と写真と、鮎川哲也の短文が掲載されている。
お馴染みの伝法探偵が登場した、大阪とその近隣を舞台に大阪弁の会話で展開する。
カバーには本格中の本格と書かれているが、それはどうか、少なくともスマートでは無く力技の展開を感じる作品だ。
(2022/07/03)
「陳舜臣「弓の部屋」」
陳舜臣は1961年に第7回江戸川乱歩賞を受賞してデビューした。
本格ミステリを中心に書いたが、直ぐに中国を舞台にしたロマン小説や歴史ミステリ小説を書き始めた。
さらにはミステリを離れた、歴史小説を書き始めて例えば「阿片小説」などがある。
それに伴い、ミステリの比率は少なくなっていった。
「弓の部屋」は東都ミステリ叢書の1冊で、1962年の初期の本格ミステリだ。
本文に加えて、作者あとがきと著者紹介と写真があり、江戸川乱歩の帯文がある。
神戸の異人館等を舞台にした本格ミステリだ、レギュラー探偵の陶展文は登場しない。
作者の長編3作目で「あとがき」で執筆に関わる苦労が書かれている、その後の活躍の前の時期だ。
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(2022/07/13)
「佐野洋「遠い声」」
佐野洋は1958年に作家デビューした、翌年から専業となり長編「一本の鉛」を発表した。
デビュー時から直ぐに、多数の作品を発表した事でトップ作家となった。
「遠い声」は1962年に東都ミステリ叢書の1作として出版された。
作者のあとがきと、帯に作者紹介と写真があり、帯に多岐川恭の文がありその内容から佐野が多数本を出していたことが判る。
特定のミステリのジャンルに捕らわれず、複合的な新機軸を求めた。
東都ミステリ叢書は書き下ろし作品が多いが、「遠い声」は雑誌連載後の単行本化だった。
その後に作者は、作家活動と並行して、評論活動を行い、その分野でも有名となった。
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(2022/07/23)