「都筑道夫「飢えた遺産」」
都筑道夫は多数のペンネームを駆使して多数のジャンルの作品を残したとされる、現在では都筑名義に統一されている。
翻訳家であったり、編集者でもあったが、作家として活躍後も評論でも活躍した。
初期には趣向を凝らした長編を書き、その後は名探偵のキャラクターを多く作りシリーズ作を書いた。
SF・時代小説等の多数のジャンルも書き、さらにショート・ショートも書いた。
「飢えた遺産」は東都ミステリ叢書の1冊で1962年に出版された、その後雑誌連載時の題「なめくじに聞いてみろ」に戻されて、復刊もされている。
本書は作者あとがきと、カバーに作者近影と紹介があり、さらに福永武彦の短文がある。
殺人道具発明家の息子が主人公で、殺し屋を殺して歩くというハードボイルドタッチの連作長編だ。
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(2022/08/02)
「野口赫宙「湖上の不死鳥」」
野口赫宙は、「黒い真昼」の項で書いたように、第二次大戦前から作品を別名義で多数発表しているらしい。
昭和30年付近から野口赫宙名義で広義のミステリも書き始めた。
「湖上の不死鳥」も「黒い真昼」と同様に、古書でたまにのみ見かける。
「湖上の不死鳥」は東都ミステリ叢書の1冊で、昭和37年刊行で、ミステリ色はこちらの方が濃い。
本文と作者あとがきがあり、カバーに作者の紹介と写真がある、さらに井上友一郎の短文がある。
あとがきで作者は、社会派ミステリと純文学ミステリとサスペンスに言及し、さらに本格ミステリと探偵小説についても書いている。
作者の色々なジャンルに対する思いのせいか、多数の要素が本作に組み込まれている、それはプラスにもマイナスにもなる。
事件の謎を追う形で進んでも、ミステリかどうかは微妙だ。
(2022/08/12)
「今日泊亜蘭「光の塔」」
今日泊亜蘭は1953年頃から科学小説を書き出していたがジャンル的に定まっていない時期でもあった。
複数の奇妙なペンネームを使っていたが、本書のペンネームも同様だがこれを機会に定まった。
「光の塔」は1962年に東都ミステリ叢書の1作として出版され、紹介は「日本最初の本格SF誕生」だった。
作者のあとがきと、帯に作者紹介と写真があり、帯に北杜夫と星新一の文がある。
副題は「刈り得ざる種」で、あとがきに寄れば、「この題で雑誌「宇宙塵」に連載して出版が決まり脱稿した」とある。
さらに「今日泊自身の作品はジャンル不明と言われたが、東都ミステリ叢書が本書をミステリの1つと判断した」ともある。
叢書内でもページ数が特に多く700枚ものの、大長編でもあった。
電気が機能を止める事が、光の意志として描かれて行く。
(2022/08/22)