古書日記(2022/12)

「藤木靖子「隣りの人たち」」

藤木靖子は1960年にミステリ短編賞でデビューしたが、後にジュニア小説に執筆の主体が変わった。

ジュニア小説ではコバルト文庫を中心に長編も多数書かれたが、ミステリの長編は2作のみだった。

長編「隣りの人たち」は東都ミステリ叢書に1961年に発表した初長編だ。

作者のあとがきと、カバーに作者紹介と写真がある。

作者は自身が個別の家に住まず、間借り生活して来た、そこでは多数の人の中で暮らすことになり、さまざまな喜怒哀楽があると書いている。

冒頭に家の見取り図があるが、そこでは鍵とは無縁でカーテン等だけで区切られただけの部屋に、間借り人の6家族が住んでいる。

視覚も声もつつぬけの生活空間は、雨戸はあるがプライバシーとか密室とかは無縁だった。

それでも秘密も隠し事もある空間で、死亡事件が起きて、謎もあればトリックもあるミステリが進んでゆく。

短編では女性の心理サスペンスが多い作者だが、本作では会話が多くユーモアが強い。

(2022/12/10)

「日影丈吉「応家の人々」」

日影丈吉は、1949年にミステリ界にデビューして短編の名手と言われたが、長編も多数ある。

長編ぼ作風も多彩だが、幻想味の濃い作品群があり特徴の1つだ。

さらには戦時の経験を生かして書いたとされる台湾物がある。

長編「応家の人々」は東都ミステリ叢書に1961年に発表した長編で、台湾物だ。

本文と作者のあとがきがあり、カバーに作者の紹介と写真がある。

「あとがき」で、「長編『内部の真実』で北台湾を舞台にしたので、熱帯の南台湾を書きたいと思った」「明治41年の写真集と、 昭和10年の写真集と、後者の頃の自身が見た光景から再現した」としている。

(2022/12/20)

「多岐川恭「人でなしの遍歴」」

多岐川恭は昭和29年に白家太郎名義でデビューした。

昭和33年に「氷柱」を発表しら時から、多岐川名義に変えた。

その直後に、「濡れた心」で江戸川乱歩賞受賞、「落ちる」で直木賞を受賞した。

「人でなしの遍歴」は1961年に東都ミステリ叢書の1作として出版された。

作者のあとがきと、カバーに作者紹介と写真があり、カバーに結城昌治の文がある。

作者のあとがきは、エッセイ風であり、近況とミステリや小説に対する思いを書いていう。

主人公は命を狙われた、悪の人生から止むを得ないと思うがしれが誰かを知りたい。

恨まれそうな人物を訪ねて行くが、奇妙な展開となって行く。

(2022/12/30)