「仁木悦子「黒いリボン」」
仁木悦子は1957年ミステリ作家としてデビューした、それは第3回江戸川乱歩賞受賞作だった。
音楽学校の生徒の1人称でその兄を名探偵役とした、明るい雰囲気の作品で読者層を広げたとされた。
その後にこの兄妹が主人公の作品を中心に、作品を発表した。
「黒いリボン」は1962年に東都ミステリ叢書として出版された。
本文と作者の「あとがきの代わりに」があり、さらにカバーに作者紹介と写真がある。
そしてカバーに新章文子の短文がある、仁木はこの叢書の新章作品に短文を書いていた。
仁木兄妹は春夏秋冬の4長編があり、本作は4作目の春になる。
本作は詐欺の新商売を考えた男の行動を描く、作中に佐野洋「欠員製造業」が登場する。
仁木作品は、本格推理だが、本作は誘拐事件を扱いサスペンス味が濃い。
(2023/02/08)
「大藪春彦「名のない男」」
大藪春彦は1958年に、同人誌から中編が、雑誌「宝石」に転載されてデビューした。
その主人公・伊達公彦は「野獣死すべし」等のシリーズとなって行った。
アメリカの小説の影響を受けたとされた作品群は、暴力的・犯罪的な要素が強いが新しい要素も多かった。
長編「名のない男」は1963年に東都ミステリ叢書の1冊として発表された。
主人公の一人称で語られるハードボイルドスタイルであり、警察官だが覆面刑事=秘密捜査官だ。
本書は作者あとがきと、カバーに作者近影と紹介があり、さらに仲代達也の短文がある。
作者は後書きで小説でも作品でもなく、銃と車について語る、だが「羊の衣を来た狼のような車」を語り、実生活では地味に行きたいとした。
本作の主人公は、ハードボイルドではしばしばある名のない「私」であり、それも作者の願望のひとつかもしれない。
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(2023/02/18)
「結城昌治「死者におくる花束はない」」
結城昌治は昭和29年にデビューして、多数のジャンルの作品を書いた。
その一つで代表的なジャンルが、ハードボイルドであった。
いくつかのシリーズがあるが、シリーズ作品数は多くない。
「死者におくる花束はない」は1962年に東都ミステリ叢書の1作として出版された。
作者のあとがきと、カバーに作者紹介と写真があり、さらにカバーに中村真一郎の短文がある。
作者のあとがきでは、ハードボイルド探偵小説に対する思いが書かれている。
久里十八探偵事務所の探偵のわたしが主人公であり、名前は中々出てこないが私立探偵・佐久シリーズと呼ばれる。
その後に短編集と長編が加わり、3冊のシリーズとなった。
その後には、私立探偵・真木シリーズや、紺野弁護士シリーズが登場する。
(2023/02/28)