古書日記(2023/05)

「鮎川哲也「黒い白鳥」」

鮎川哲也は1956年の「黒いトランク」から鮎川名義を使用したが、同時に執筆注文が一気に増えた。

「黒い白鳥」は江戸川乱歩編集の雑誌「宝石」に連載されて、終了後に講談社から単行本出版された。

1960年の単行本「黒い白鳥」は帯付き箱入りで、本文に、簡易線路地図と、末尾に時刻表がある。

その後に文庫を含めて、数回復刊された。

1975年の角川文庫版が普及しているが、その他にも3回文庫化されている。

鮎川の鉄道アリバイやトリックが多数の作品に登場するが、「黒い白鳥」では2つの中心トリック共に鉄道トリックだ。

特に片方は、作中に挿入されている線路地図も大きなヒントになっており、文中で逃した人も気が付くようになっている。

故に復刊でも掲載されるが、時刻表は省かれた復刊版もあるようだ。

連載の頃は社会派の台頭時であり、松本清張「零の焦点」との動機の重なりは鮎川自身ものちに書いている。

(2023/05/09)

「鮎川哲也「憎悪の化石」」

鮎川哲也は1956年の「黒いトランク」から鮎川名義を使用して、長編発表も増えた。

「憎悪の化石」は1959年に講談社から「書下ろし長編シリーズ(1)」として、書下ろしで単行本出版された。

単行本「憎悪の化石」は箱入りで、本文と末尾に4ページの時刻表がある。

その後に幾度か復刊され、文庫版も4文庫から出ている。

1975年の角川文庫版が普及して解説があるが、多くの文庫では作者自身の読書ノートも復刊掲載している。

鮎川が作家歴は長いが作品数は多くはないが、1959年頃は鮎川の「当り年」「繁忙期」と言われている。

長編「黒い白鳥」「憎悪の化石」「リラ荘事件(後に改題)」が発表され、短編も多数書いている。

「憎悪の化石」は鮎川哲也長編全集の「作者ノート」に自作解説しており、後に文庫に転載されている。

その中で「中絶した書下ろし長編シリーズについて、「黒い白鳥」との併行しての執筆について、そのほかにも多彩な内容」が書かれている。

(2023/05/19)

「鮎川哲也「死のある風景」」

鮎川哲也「死のある風景」は講談社から書下ろし長編として、1965年に出版された。

ただし、同名の短編が先に発表されており、短編の長編化とされている。

「死のある風景」には手書き地図と時刻表とが本文内に掲載されている、復刊時も同様だが地図は一部変更もある。

さらに初出単行本のみには、スナップ的な風景写真が数枚掲載されている。

「死のある風景」は探偵役で鬼貫警部が登場するが、この頃から作品内での登場場面が少ないケースが増えてくる。

本格ミステリ作者の鮎川だが、当時の社会派台頭の影響や、自身の作風の感性と新たな展開等が絡んだようだ。

「死のある風景」は幾度か復刊されたが作者はわずかな改稿を行ったようだ、後には文庫化も行われた。

(2023/05/29)