「鮎川哲也「偽りの墳墓」」
鮎川哲也の「偽りの墳墓」は、1963年に新書版で出版された。
「偽りの墳墓」は雑誌「小説新潮」に書かれた短編をもとに、長編に書き換えられて単行本出版された。
単行本「偽りの墳墓」はカバー付き新書版で、本文に作者あとがきがある、さらに文中に簡略図や時刻表がある。
その後に、2度の文庫版が復刊されている。
浜名湖付近の事件で、容疑者にアリバイがあった、捜査が始まってゆく。
アリバイや写真をめぐって、東京や岡山にも捜査が広がって行く。
所轄刑事や、丹那刑事等の本庁刑事が調べるなかで、後半も進むと鬼貫警部も登場する。
作者あとがきに「作中の病気の対策を巡って・・(中略)、読者が関心を持てば(後略)」とあるが、その後も大きくその問題は時代と共に変わる。
また作品中の地名を架空にすると、時刻表と食い違う現象が起きて食い番う事も、述べられている。
(2023/06/08)
「鮎川哲也「積木の塔」」
鮎川哲也の「積木の塔」は、1966年に読売新聞社の「新本格推理小説全集」の第1巻として出版された。
「新本格推理小説全集」は全10巻で、松本清張責任監修。解説となっており序文があり、作者紹介的な解説がある。
全集10巻は書下ろしであり完結しており、60年後の現在でも著名な作品が多く含まれている。
松本の序文・解説となると興味はあるが、内容的には無難な紹介であり、独自の視点での解説ではない。
本はソフトカバーで特徴的なオレンジ色のカバーで、さらにビニールカバーでもある。
時刻表が添付されたアリバイを丹那刑事らが悩み、半分頃から鬼貫警部が登場してアリバイ崩しに取り組む。
本作は、その後に角川文庫で復刊されて多く流通した。
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(2023/06/18)
「鮎川哲也「風の証言」」
鮎川哲也「風の証言」は毎日新聞社から、1971年に出版された。
ハードカバーの本で、著者の「あとがき」がある、時刻表は添付されていない。
「あとがき」では、「本編は中編『城と塔』を書きのばした。旧作の題名を使うこともあるが、ピントがずれることもあり、本作は改題した」とある。
さらには、トリックについての言及があり、「あとがきは小説を読んだ後に読んで欲しい」とある。
「風の証言」は時刻表トリックはなくその添付がない、代わってカメラのフィルムトリックがある。
フィルムトリックは当時増えており、鮎川もチャレンジしたようだ、あとがきには「中編にはミスがあり、長編化時には詳しい人のアドバイスを得た」とある、現在ではデジタル写真の時代になったのでフィルムトリックは減っている。
「あとがき」にはその他のトリックの関する言及もある。
「風の証言」は鮎川の16冊目の長編で、鬼貫警部物では12冊目だ。後の文庫での復刊もある。
(2023/06/28)