古書日記(2023/07)

「鮎川哲也「鍵穴のない扉」」

鮎川哲也の「鍵穴のない扉」は、1969年にノベルス版で出版された。

カッパノベルスは推理小説を中心にした膨大な数を出版した叢書だった。

書下ろしや雑誌連載後出版が中心であったが、作品数が多くない鮎川は長編は2冊だった。

ただし昭和50年以降に、鮎川は複数のアンソロジーを編んだが、いくつはこのノベルスで出版された。

「鍵穴のない扉」は鬼貫シリーズの1冊で、複数のアリバイトリックを含む。

挿絵と共に各地の写真が載っているが、トリックの種類から時刻表は掲載されていない。

アリバイトリックの時刻表や小道具は、時代と共に変化して使われなくなり、新たなものが登場する性格がある。

本作もまた時代の影響は大きいが、当時を知る者には他の作品等への影響もあったと知っている。

人気のある叢書であり、この作品も多数の版を重ねた。

(2023/07/08)

「鮎川哲也「沈黙の函」」

鮎川哲也の「沈黙の函」は、1979年に「鍵穴のない扉」と同じカッパノベルスで出版された。

「沈黙の函」は北海道・函館を舞台に、鬼貫と丹那が蝋管レコードが絡む事件を捜査する。

鮎川のあとがきでは「雑誌連載した『蝋の鶯』の改題で、改題しない方針だが、難しい漢字の題名に出版社が難色を示す。」としている

さらには音楽に関する事があとがきに書かれている。。

「蝋の鶯」の題は、ファンには「朱の絶筆」雑誌連載時に語られており、待望の作品だった。

雑誌時には実名でなかった地名が、ノベルス版の前に取材を行い実地名に改稿されている。

時刻表の掲載は無いが、舞台の弘前や津軽海峡周辺の地図が掲載されている(青函連絡船が運行していた頃だ)。

(2023/07/18)

「鮎川哲也「戌神はなにを見たか」」

鮎川哲也「戌神はなにを見たか」は講談社から、1976年に出版された。

変形ハードカバーの本で箱入りだ、推理小説特別書下ろしの1冊だ。

箱と本文あとの「あとがき」に、作者の言葉がある。

そこでは「日本の推理小説のとって縁の深い土地を舞台にした。登場人物も推理小説界だが、モデル問題に注意した」とある。

さらに「登場人物にも団体名にもモデルはない。推理小説誌は架空だが脱稿が遅れたことで偶然に「幻影城」発刊と重なった。」とある。

途中から丹那刑事が三重の名松線にのる。

さらに乱歩や名張、「二銭銅貨」も登場する、以下も推理小説関連が登場する、。

最後には鬼貫警部も、上記地を訪問して解決して行く。

(2023/07/28)