「鮎川哲也「死びとの座」」
鮎川哲也の「死びとの座」は、1983年にソフトカバーで単行本で出版された。
単行本のサイズで、文庫本やノベルス本と似た装丁のソフトカバーだ。
コスト的な問題もあったか、ハードカバーや凝った単行本りりは、ソフトカバーが増えていた。
本文に加えて、あとがきの「書き終えて」があり、さらには帯に出版社情報誌に書いたコラム「『死びとの座』縁起」がある。
「書き終えて」には、週刊誌連載の事、同時連載した作家の事、病気への注意、作中の推理作家のモデルについて、曲「冬の旅」について、そして作品の舞台について」等が語られている。
一方の帯文では、「題名を決めるのが苦手。「死びとの座」についてある人から、カーの「嘲るものの座」を聞いて差しつかえないと思った。のちに高木彬光「死神の座」を知り愕然とした・・・」と書いている。
事件が起きて警察捜査が始まり、その中で鬼貫と丹那も登場する。その中で推理作家の高田が登場して、高田の捜査が中心に描かれる。
再後半になり、再度鬼貫が登場して、高田と鬼貫が事件を解決して行く。
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(2023/08/07)
「鮎川哲也「宛先不明」」
鮎川哲也の「宛先不明」は、1965年に学習研究社から「ガッケン・ブックス、ミステリ9」の1冊として出版された。
「産業推理小説」シリーズの1冊ともなっていて、新書版だ。
鮎川は後に立風書房の長編全集の作者ノートでその時の事情を書いている、「学習研究社は学習図書の出版社で、娯楽物を手がける時に、体裁を とるために産業推理のタイトルを付けたのだろう。その後の小説等刊行子会社が立風書房だ。」と書いている
「宛先不明」は12冊目の長編で、写真や地図や時刻表が挿入されている。
だが時刻表アリバイものでは無く、「宛先不明」の題の様に郵便トリックがある。
「ガッケン」初出本の目次は「第一章」だが本文は「一」のみで、立風書房版では目次が無くなり、後の講談社文庫版では目次はあるが、本文 を含めて章の数字は無くなった。
丹那刑事は早い時期から登場して、色々な刑事らと捜査する、小説の再後半になって漸くに鬼貫警部が登場して解決に向かう。
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(2023/08/17)
「鮎川哲也「翳ある墓標」」
鮎川哲也「翳ある墓標」は早川書房から1962年に出版された。
変形新書サイズで簡易箱入りの本で、「日本ミステリシリーズ」叢書の1冊だ。
箱と本文あとの「作者あとがき」がある。
講談社ロマンブックでも出版され、その後に1988年に加筆されて立風書房からも出版された。
立風書房には初出の「作者あとがき」が「著者あとがき」として採録され、さらに「再刊にあたって」に作者の文がある。
さらに作者プロフィルと、著作リストがある。
作者「本編にはシリーズキャラクターが登場しない。長編のなかで異色作となる。中略。通俗小説を面白くするのは偶然の出来事だが、本格物はそれを嫌う。」
(2023/08/27)