古書日記(2023/10)

「鮎川哲也「砂の時計」」

鮎川哲也の「砂の時計」は、1974年にソフトカバーで毎日新聞社から出版された短編集だ。

カバー表紙に「殺人犯人は、巧妙に罠を仕掛ける。(中略)本格派作家の華麗なる挑戦」と書かれている。

収録作は「砂の時計」「ヴィナスの心臓」「ドンファンの死」「薔薇荘殺人事件」「ポルノ作家殺人事件」「悪魔はここにいる」だ。

初出誌の記載はない。

特徴は、全ての作品に、後半の終了近くに「犯人の推理」を求める短文が挿入されている事だ。

ただし、「ポルノ作家殺人事件」では最終ページに載っており、流石に答えが見えている場合もある

「砂の時計」には鮎川自身らしき人物が登場する、さらに「薔薇荘殺人事件」には鮎川が登場する。

「薔薇荘殺人事件」「悪魔はここにいる」では、星影龍三が最後に登場して事件を解決する。

(2023/10/06)

「鮎川哲也「わらべは見たり」」

鮎川哲也の「わらべは見たり」は、1978年に新評社からハードカバーで出版された。

収録作は「わらべは見たり」「首」「尾行」「白い盲点」「あんこう鍋」「暗い穽」「自負のアリバイ」「死に急ぐもの」で、1963から1971年の発表作だ。

本文と、作者のあとがきがある。

後付には発行年月日はなく、著者印の所に代わりに小紙片が貼られており、そこに年月日が入っているの。

あとがきで「1編を除き、倒叙物ばかりである。(中略)倒叙形式でいくと、捜査側の描写を大幅に省略することが可能。」とある。

さらには「わたしは短編でこそ倒叙物を書いているが長編では一度も試みたことがない」と書いている。

中編「死に急ぐもの」は倒叙ではなく、「砂の城」とおなじに鳥取を舞台にしていて、取材旅行の知識を流用したしている。

(2023/10/16)

「鮎川哲也「ブロンズの使者」」

鮎川哲也「ブロンズの使者」は徳間書店から1984年に出版された。

ノベルズ版で、エンターテイメントを多く扱う叢書だ。

本文と「あとがき」があり、カバーには作者紹介と写真がある。

収録作は「バー三番館」のバーテンが最後に謎を解くシリーズの3冊目で、短編が6作収録されている。

「あとがき」では、「本格物と呼ばれる謎解き小説は元来が難解なものなのだ。読者は脳をもみほぐしながら一行一行 を丹念に読み進むことによって、作者が用意しておいたミスディレクションや伏線に気づく事が出来、面白さが倍加される。と書いている。

この本の収録作には、消失テーマが複数ある事も特徴だろう。

(2023/10/26)

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