「仁木悦子「猫は知っていた」」
仁木悦子「猫は知っていた」は、1957年に大日本雄弁会講談社から出版された、仁木の最初の本だ。
第3回江戸川乱歩賞受賞作であり、度々増刷さた、ベストセラーでもあった。
シンプルなデザインの簡易函入りで、本体も紺に近い色の地味なデザインだ。
著作近影と、作者の言葉と、「女流作家の登場を喜ぶ」と称する選考状況の文が収録されている。
その後も繰り返して復刊されて、多数の出版社から色々な版で出版された。
個人全集や、ミステリー全集や、乱歩賞作品集等にも収録されたので、日本のミステリーの中でも多数の本がある作品の一つだ。
その意味ではテキスト的にも入手は容易で、古書でも価格的に入賞も容易な本となっている。
ただし初出本でかつ、美本となると一気に少なくなるだろう。
現在では電子書籍でも読める。
(2024/01/04)
「仁木悦子「林の中の家」」
仁木悦子「林の中の家」は、1959年に講談社から出版された、仁木の第二長編だ。
「猫は知っていた」は公募応募作であり書下ろし長編だが、本作は雑誌連載作であり完結後に単行本になった。
前者がシンプルな装丁本だったが、本書は地味だがカラフルな凝った装丁だ。
通常の単行本であり、本文の長編のみが掲載されている。
仁木雄太郎と仁木悦子兄妹が主人公のシリーズは、仁木悦子の初期の作品の中心であり、長編は夏秋冬春の4作品がある。
2作目の本作は秋であり、その設定は短編を含めて「先輩夫婦の長期旅行中に、留守番を行い、家を自由に使える」設定だ。
「林の中の家」は地味で落ち着いた本格長編であり、一般的には知名度は高くはないが、仁木ファンには本作を推す人も多い。
(2024/01/14)
「仁木悦子「殺人配線図」」
仁木悦子「殺人配線図」は桃源社から1960年に書下ろしで出版された。
叢書「書下ろし推理小説全集」の1冊で、デビュー直後だが、ベテラン作家の中で15番目で名前が並んでいる。
正方形に近い変形のハードカバーの箱入り本だ。
箱に作者のことばが有り、本体に中島河太郎の解説があり、デビューから本作までの経緯が語られている。
本作では、仁木作品の別のキャラクターの吉村駿作が登場する。
題名は、小道具的に登場するラジオの配線図に由来する。
中島は吉村をミルン「赤い館の秘密」のギリンガムの風貌と解説している。
(2024/01/24)