「仁木悦子「刺のある樹」」
仁木悦子「刺のある樹」は、雑誌連載後に1961年に宝石社から出版された、仁木兄妹シリーズの3冊目の長編だ。
題名はダブルミーニングであり、1つは仁木雄太郎が水原家に住む代わりに世話をしている、サボテンだ。
変形のハードカバー本で、帯に江戸河乱歩の評がある。
ほぼ本文のみという、シンプルな本だ、仁木の検印はやや変わっている。
仁木兄妹シリーズは四季の4長編だが、本作は冬であり、温室内でサボテンを世話しながらの会話が多い。
兄妹は雄太郎の先輩の水原夫妻が海外旅行中の邸宅に住む。
大学の植物学専攻の雄太郎は、サボテンの世話をする事が条件で住まいを借りている。
3長編と短編5作の、兄妹シリーズは、「猫は知っていた」以外はこの住まいに住む設定だ。
作中で植物がキーワードになる作品が多い。
(2024/02/03)
「仁木悦子「二つの陰画」」
仁木悦子「二つの陰画」は、1965年に講談社から出版された、仁木の第6長編だ。
「二つの陰画」はハードカバーで、小説本文のみのシンプルな単行本だ。
櫟健介と知子夫妻とその息子・究介一家が主人公で登場し、長編は本作のみとなる。
健介の職業はカメラマンであり、7章の章題はそれを反映している。
さらには題名も写真用語であり、意味が分かっていると、トリックを反映した題名と判る。
本作は夫妻の推理会話が主体に構成されており、さらには密室状況もある。
この一家はその後は、少数の短編作品に登場する事になる。
(2024/02/13)
「仁木悦子「枯葉色の街で」」
仁木悦子「枯葉色の街で」は文春新社から1966年に書下ろしで出版された。
叢書「ポケット文春」の1冊で、ノベルス版のソフトカバーだ。
カバーに著者の写真と紹介があり、仁木邸の猫・ルミの事等が書かれている。
本作の主人公は詩人の若者・江見次郎であり、もう一人は下宿先の娘・小森敦子だ。
だが、江見が偶然に出会った幼女の的村ミチルが2人以上に全編で印象に残る。
江見が拾った?札入れにあった、8枚の名刺で持ち主を探す事になる。
その後に度々復刊されたが、角川文庫の天藤真の解説も印象的だ。
(2024/02/23)