「仁木悦子「陽の翳る街」」
仁木悦子「陽の翳る街」は、1982年に講談社から書下ろしで出版された。
新書版の200ページの短めの長編で、10年ぶりの長編であり、さらには仁木の最後の長編ともなった。
カバーに著者紹介と写真と、著者のことばがある。
仁木はそこで「小さな街の商店街の人間たちの登場する作品を書いてみました。」と書いている。
商店街の4人が遭遇した事件に関わって行く、話の展開となる。
7章の章題が、「花の散る街」「翳のさす街」のように「街」び統一されている。
作者は「本当の主人公は、街そのものであるかもしれません。」としている。
(2024/04/03)
「仁木悦子「粘土の犬」」
仁木悦子「粘土の犬」は、1958年に大日本雄弁会講談社から出版された、仁木の短編集だ。
「粘土の犬」は、変形ハードカバーの箱入りで、白地の箱は「猫は知っていた」の外観と類似がある。
収録作は、「かあちゃんは犯人じゃない」「灰色の手袋」「黄色い花」「弾丸は飛び出した」「粘土の犬」だ。
「かあちゃんは犯人じゃない」は子供の視点から描いた短編で、仁木の得意分野だ。
「灰色」「黄色い」「弾丸は」の3作は、仁木雄太郎が探偵で仁木悦子がワトソン役のシリーズ作品だ。
「粘土の犬」は目が見えない人が主人公であり、触れたものの記憶が何かを描く。
初期の作品群だが、いずれも後に度々アンソロジーに採用された代表作だ。
(2024/04/13)
「仁木悦子「赤い痕」」
仁木悦子「赤い痕」は東都書房から1961年に出版された。
4作収録の2冊目の短編集だ、後期は仁木は短編中心になり、作品集が増えるがこの時期は少ない。
ハードカバー単行本で函入りで、作者の「あとがき」がある。
仁木雄太郎・悦子シリーズの「赤い痕」、吉村駿作シリーズの「みずほ荘殺人事件」、非シリーズ「おたね」、小宮山牧師の「罪なきものまず石をなげうて」を収録する。
仁木はあとがきで、「小宮山牧師を探偵役で登場」と書いているが、後の自選作品集で「宗教者を主人公にする難しさで、やめた」と書いている。
本作品集は多彩なキャラクターが登場して、後にも度々アンソロジー等にも採用されるが、それはバラバラであり、4作まとめてでは無かった。
(2024/04/23)