古書日記(2025/07)

「天藤真「日曜探偵」」

天藤真「日曜探偵」は、1992年に出版芸術社から出版された、没後の出版になる。

「日曜探偵」は「犯人当て」の作品を集めた作品集で、「塔の家の三人の女」「誰が為に鐘は鳴る」「日曜日は殺しの日」を収録する。

さらに「はじめに」(署名なし)と、新保博久「日曜探偵のすすめ」という長い解説がある。

加えて、「天藤真作品リスト」と「天藤真著書リスト」が収録されており、資料性も高い。

そこでは、ハウスネームの別名義の長編があるとも書かれている。

この本の奥付けには、「コピーライト・高木彬光、1991」の記載があるが、たぶん誤植だろう。

(2025/07/05)

「鷹見緋沙子「わが師はサタン」」

鷹見緋沙子「わが師はサタン」は、1975年に立風書房から出版された。

創元推理文庫の「天藤真推理小説全集」の第11巻として、天藤真「わが師はサタン」が復刊されて、別ペンネームでの作品と公表された。

天藤真「日曜探偵」で「ハウスネームの別名義の長編がある」と公式に書かれたことで、ファンの間で該当作探しが行われた。

その時点で「鷹見緋沙子」がハウスネームだち推測されたが、作品名としては作風から、別の作品との推測が多かった。

「わが師はサタン」の初出本では、森村誠一と中島河太郎のカバー紹介文があり、中島はそこで新人女流だと書いている。

鷹見緋沙子名義でその後も複数作が書かれたが、大谷羊太郎と草野唯雄によって書かれたようで、天藤作はこの1作だとされた。

「わが師はサタン」は天藤名義の作品とは、作風が異なりその面では意外だと感じた面が強かった。

(2025/05/28)

「土屋隆夫「天狗の面」」

土屋隆夫「天狗の面」は、1958年に浪速書房から出版された。

土屋隆夫は1949年にデビューして短編を継続的に発表してきた、「天狗の面」は長編第1作となる。

「天狗の面」は箱入りのハードカバー本であり、江戸川乱歩による「序文」と、作者の「あとがき」がある。

「天狗の面」の最終章では、土屋は「芸術論」と「探偵小説は割算の文学」とを展開する。

乱歩の序文は、上記の「割算の文学」について語っている、この後の土屋への解説や評論では、必ずと言っても良いほどに引用されることになった。

「天狗の面」は、繰り返し復刊され、複数回に文庫化された。

(2025/08/04)

「土屋隆夫「天国は遠すぎる」」

天藤真「天国は遠すぎる」は、1963年に浪速書房から出版された長編第二作だ。

「天国は遠すぎる」は、当時に増え始めた新書版の叢書のひとつの「ナニワ・ブックス」の1冊として出版された。

カバーには、「長編推理小説」と書かれており、土屋氏の写真と、筆者が不明の土屋の紹介文が載っている。

その紹介では「(前略)、維と倫理を主眼とする推理小説にロマンテーシズムの芳香が漂よう作品を書いてみたいのが氏の現在の心境であるらしい。信州避遠の地で中央のマスコミ を相手に黙々と筆を取る土屋氏に意欲的な作品を望むのは私一人であるまい」とある。

「天国は遠すぎる」は、全体が17章の短めの章で構成されており、最終章が「天国は遠すぎる」となっている。

捜査側の久野刑事とその妻の夫婦と、犯人側の夫婦とが、中心的に描かれており、警察の捜査を描く推理小説の中での特徴となっている。

(2025/08/19)