古書日記(2025/09)

「土屋隆夫「危険な童話」」

土屋隆夫「危険な童話」は、1961年に桃源社から出版された。

桃源社の「書き下し推理小説全集・第二期」の叢書の1冊でだ。

「危険な童話」は、ソフトカバーで箱入りの本だ。

本体は作品だけを掲載するが、箱の裏側に「作者のことば」がある。

そこでは、「(前略)、私の言いたいことは、全部、この作品の中に述べてあります。つまり、この小説の第一ページから終わりのページまで、すべてが「作者のことば」であります。(後略)」

と、編集部宛の手紙風に書いている。

14章に序章と終章を加えて、それぞれの冒頭に童話が置かれている構成だ。そしてその童話にトリックが隠されている。

(2025/09/03)

「土屋隆夫「影の告発」」

土屋隆夫「影の告発」は、1963年に文芸春秋新社から出版された。

新書サイズの叢書の「ポケット文春」の1冊で、108の番号だ。

カバーに著者近影の写真と、土屋の紹介文がある。

「作品はもちろん面白いが、作者の人柄のほうが更に面白い(中略)。大学の卒業証書を質に入れた(中略)。戦時中にも徹底した快楽派の人生態度を貫き、(中略) 化粧会社宣伝部に長く籍を置いた氏は同社が偶々備えていた、演劇関係の夥しい蔵書を、ほとんど読破したという。この道草と蓄積が作品の洒落れた会話や緻密な構成を作り出している(後略)」

長編「影の告発」は、「XのYZ」のような漢字3文字と「の」の4文字の章題であり、全体が14章で成り立つ。

さらに各章の冒頭に、1-2ページの「少女についての文章」が置かれている、それは何かは解決編でわかる構成になっている。

「影の告発」は土屋の長編作品のレギュラー探偵の千草検事や大川警部や野本刑事らが初めて登場した作品だ。

(2025/09/18)

「土屋隆夫「赤の組曲」」

土屋隆夫「赤の組曲」は、1966年に文芸春秋から出版された。

新書サイズの叢書の「ポケット文春」の1冊で、167の番号だ。

カバーに著者近影の写真と、著者の文章がある。

「(前略)。謎ときを主体にした推理小説は、児戯に類するという非難もあるが、わたしは、そうは思わない。いわゆる本格モノは、推理小説の楷書である。書道で言えば、運筆の 基本なのだ。基本を無視して、展開も進歩もあり得ない。(後略)」

長編「赤の組曲」は、長編5冊目で、千草検事シリーズの2冊目だ。

「前奏曲」と「終曲」の間に、「赤い」がつく第一楽章から第四楽章を置いた、6章からなる。

「赤の組曲」は、雑誌連載後の単行本出版の初めての作品であり、書き下ろし長編が中心の土屋には少数派になる。

(2025/10/03)

「土屋隆夫「針の誘い」」

土屋隆夫「針の誘い」は、1970年に双葉社から出版された長編第6作だ。

「針の誘い」は、新書版の叢書「双葉新書」の1冊として出版された。

カバーには、「長編推理小説」と書かれており、土屋氏の写真と短文「この一冊を手にしたあなたへ」と著者紹介がある。

「この一冊を手にしたあなたへ」では「これは推理小説であう、(中略)。幼児誘拐という、非情な犯罪を扱っていますが、作者は、閑雅な遊びの精神と、仮講の論理に托したロマンを 、読者にお届けしたつもりです。(中略)あなたが、真に、推理小説の読者であるならば、作者は、この書物の中から手をさしのべて、あなたに握手を求めます。」と書いている。

「針の誘い」は、全体が5章で、「前景」「近景」「遠景」「背景」「全景」と名付けられている。

誘拐された子供「ミチル」を登録商標にした、その父の菓子会社と誘拐との関係を千草検事は探る。

(2025/10/18)