古書日記(2026/01)

「土屋隆夫「ミレイの囚人」」

土屋隆夫「ミレイの囚人」は、1999年から雑誌に連載されて、その後に1999年に光文社から出版された。

「ミレイの囚人」はハードカバーの単行本だ。

「ミレイの囚人」の帯には、「名作『華やかな喪服』から3年--。土屋隆夫が満を持して放つ、待望の長編本格ミステリー!」「監禁事件と殺人事件の点と線」と書かれている。

3年は土屋としては短いが、この紹介文は土屋の新刊での常套句となっている、出版社が同一になった事も理由の一つだろう。

内容の紹介では、「推理作家・江葉章二はかっての教え子・白河ミレイの罠にはまり、彼女の書斎に、足を鎖で繋がれ監禁されてしまう。ミレイはある事情から江葉に怨念を抱いていた。」

「江葉の監禁中、接点のある一人の男が何者かに殺された。犯人は誰か!。監禁された江葉はどうなるのか!。謎が謎を呼ぶなか、事件は意外な方向に----。」となっている。

ミステリーの紹介文は難しいが、流石にこれは本作品の内容が紹介しにくいために、技と歪めた確信犯の文だろう。

江葉が推理作家であり、さらに4部からなる本文の最終の第四部「事件の真相」が江葉の手記だという、作者に都合の良い構成でもあった、さらには本作が本格ミステリーなのかにも微妙な面がある。

この頃の土屋にはミステリーの可能性を広げたいと言う方向性があったが、一方では出版社側は狭い意味の本格ミステリーを求めていた。そのために作品紹介面でも、微妙な食い違いが生まれていた。

(2026/01/01)

「土屋隆夫「聖悪女」」

土屋隆夫「聖悪女」は、2002年に東京創元社から出版された。

「盲目の鴉」以降の土屋隆夫の単行本の刊行は「聖悪女」を除いては光文社であり、例外的だった。

それ以前から、東京創元社から「土屋隆夫推理小説集成」という、文庫版全集が刊行されていて、その絡みで新作も予告されていた。

それが文庫ではなくハードカバーの単行本として出版された、ページ数の多い長編になったことも理由の一つとも思われる。

「聖悪女」はハードカバーで、「聖悪女」を連想させるカバー絵と内容紹介があり、上記全集の紹介・広告がある。

帯の紹介は「三つの乳房を持つ女の辿る戦慄の運命・・・・・・。『ミレイの囚人』から3年----巨匠、渾身の書き下ろし800枚!」とある。

お馴染みの紹介に見えるが、定番だった「本格ミステリ」との紹介はどこにも無い。

プロローグと、11章と、エピローグからなる本文は、主人公・星川美緒の3歳から64歳を超えての癌による死亡までを描いている。

その中にはミステリ度の高い章も含まれるが、全般には本格度は薄いか無く、主人公の遍歴・生き方を描く作品だった。

「聖悪女」は徐々に本格ミステリ度の比率が下がって来ていた土屋長編の中で、その極限の作品となった。

(2026/01/16)

「土屋隆夫「物狂い」」

土屋隆夫「物狂い」は、2004年に光文社から出版された。

ハードカバーの単行本サイズだ。

本体に著者の「あとがき」があり、カバーに著者の紹介がある。

帯に「本格推理界の重鎮、待望の760枚!」の表示と、光文社文庫の「土屋隆夫コレクション」の紹介がある。

「あとがき」では、「『作家というものは、ある円周上を駆けつづける孤独なランナーに似て入りる。彼は処女作からスタートし、また処女作に戻ってくる』(中略)。 わたしが推理作家としてスタートしたのが昭和24年だから、以来55年間、推理小説という円周上を走りつづけてきたことになる。(中略)『天狗の面』は作品の中心にいくつかの 謎を設定し、それを論理的に解明するという、いわゆる本格ものであったが、今度の作品も同じような手法を用いた。(後略)」

長編「物狂い」は、信州の田舎を舞台にした、本格手法の作品となった。

「物狂い」とは「狂気、乱心。また、その人」「神の乗り移った者」と説明されており、序章と8章と、終章からなる。

8章のうちの、7章には「幽霊」という言葉が入った章題がついており、本作の内容を示している。

(2026/01/31)

「土屋隆夫「人形が死んだ夜」」

土屋隆夫「人形が死んだ夜」は、2007年に光文社から出版された長編だ。

「人形が死んだ夜」は、ハードカバーの単行本で。帯に「処女長編から60年・・・・最後の書き下ろし作品」とある。

カバーに著者の写真と紹介文があり、帯に本作の紹介短文がある。

帯に権田萬治氏の短文があり「開かれた密室、奇想天外な探偵役・・、驚愕の新機軸、「倒叙推理」小説だ!」書かれていtる。

本体には、10章の本文と、作者のあとがきがある。

作者はあとがきで、「(前略)、作品の中に土田警部が登場するが、彼は私の長編第1作『天狗の面』にやはり主人公として登場している。この作品は1958年に刊行されたが、当時 まったく無名の地方作家だった私のために。江戸川乱歩先生がわざわざ序文をお寄せ下さったことは、いまなお忘れ難い感動である。(中略)

最初の長編と、おそらくは最後の長編になるであろう本作の間には、実に50年という歳月が流れている。土屋隆夫という一人の作家が50年という時間の中で、どのように変貌した。 両作を読みくらべていただくのもまた一興であろう。」と書いている。

(2026/02/15)